世界の果てまで薬を届け、虐げられた人々と
ともに差別撤廃に挑む、日本財団会長の果て
しなき旅。彼は約40年にわたって「業病」
と恐れられてきたこの病気に戦いを挑ん
できた。世界各地のハンセン病患者の
施設に自ら赴き、薬を届け、差別や
偏見の撤廃を説く。「制圧」(有
病率が1万人あたり1人未満)を
達成するための施策を各国の
元首と話し合い、実行に導く。
こうした活動の継続によって、1980年代
から現在までに1600万人を超える人々が
治癒し、未制圧国はブラジルを残す
のみとなった。
本書は日本財団会長・笹川陽平氏の
ハンセン病制圧活動に密着取材した
足掛け七年間の記録である。
私がはじめて同氏に会ったのは2009年5月。
最初の海外同行が翌年12月。1年半あまり
が空いているが、この期間は東京の財団
本部などでインタビューに応じて
もらっていた。
このとき私は彼の評伝を書くつもりで
会っており、 海外にまで出かけよう
とは思っていなかった。
けれども「生涯をかけた戦い」と本人が
言う世界規模のハンセン病制圧活動に
ついて知らなければ評伝の完成
はあり得ない。
それに彼は一年の三分の一を海外活動に
充てている。日本にいるときは分刻みの
忙しさで、なかなかじっくりとインタ
ビューするチャンスに恵まれない。
海外なら移動時間などにインタビュー
することが可能であろう。
笹川陽平がインドなどのハンセン病者や
その回復者たちと手をたずさえて、 病気
撲滅とともに差別撤廃活動に具体的に
取り組んでいることを知って、海外
の現場を見てみたいと思う
ようになったのだ。
まさかそれから20カ国前後を
訪れることになろうとは
思ってもいなかった。
この現地調査の過酷な旅は、「どうせ大名
旅行みたいなものじゃないんだろうか」
といった、こちらの浅はかな想像を
はじめから打ち砕いてくれた。
彼はどんなに遠いところでもどんなに不衛生
なところでも、そこに困っている人たち
がいると聞けば飛んで行った。
こういう日本人がいるのだ、と、私は東京
でインタビューするよりも、リアルな現場
で彼の考えや行動を追いかけながら
インタビューすることのほうに
よろこびを見出していった。
彼は暗黒の人類史に革命を起こそうとし
ているのだ。いや、とっくに起こしてい
るのだ。起こしたその革命を、さら
に連続させているのである。
高山文彦『宿命の戦記。笹川陽平、
ハンセン病制圧の記録』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!