西洋医学中心の医学界にあって、目に見えない
世界の大切さを説き続ける医師がいます。
育成会横浜病院院長の長堀優さんです。
幾多のがん患者と交流する中で
見えてきた病気との向き合い方、
病気を抱えて幸せに生きていく術とは――。
遺伝子工学の世界的権威として知られる
故・村上和雄さんとの対談からお届けします。
─────────────────
〈村上〉
つい最近、工藤房美さんという方が
本を出しているのですが、
この方は末期がんだったんですよ。
医者に診てもらった時はもう既に手遅れで、
余命1か月と宣告されたんです。
彼女には3人の息子がいたのでそれぞれに
遺書まで書かれていたのですが、私の本を
差し入れた方がいたんですよ。
それを読んだ彼女が、細胞一個一個に
お礼を言い始めたんです。
がん細胞にも「ありがとう」と10万回唱えた。
〈長堀〉
どうなりましたか。
〈村上〉
何と11か月で完全に消えたんですよ、がんが。
アンビリーバブルとしか言いようがありません。
人の思いとか感性で遺伝子に
スイッチが入るエビデンス(証拠)を、
私は読者の方から教えてもらいました。
〈長堀〉
あとはそこに法則性が見つかれば、これは
もう立派な科学になりますね。私の外来
にも、がんが消えた患者さんがいるんです。
その方もいつもニコニコして来られます。
ですから村上先生の言われたように、
人の思いががん細胞に伝わるんですね。
〈村上〉
工藤さんの話で私がすごいと思ったのは、
彼女は「がんを治してください」とは
ひと言も頼んでいないことです。
がんも自分の体の細胞の一部なんだから、
「いままでよく頑張ってくれたね」と、
むしろ感謝している。
そういう思いが体に、細胞に、遺伝子に
影響を与えたということですね。
〈長堀〉
東洋には「同治」という言葉があって、
病気が消えなくてもいい、病気とともに
生きていこうという態度のことです。
それに対応する言葉に「対治」というのが
あって、これは病気を消してやろう、
闘ってやろうという態度です。
鈴木秀子先生が奇跡的に病気の治る人の特徴
として、「愛」「感謝」「受容」という三つを
挙げています。そのうちの「受容」というのが、
「あってもいいんだ」「闘わない」という姿勢
で、「同治」に繋がる考え方だと思います。
〈村上〉
医者に頼るのではなくて、
患者にもできることがあるわけだ。
〈長堀〉
そのとおりです。
自立した思いというのが
とても大切だということを、
私は「がんの神様」から教えてもらいました。
(※本記事は『致知』2016年2月号
連載「生命科学研究者からのメッセージ」
より一部を抜粋・編集したものです)
致知出版社の人間力メルマガ
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!