月刊『致知』には毎号、
心の琴線に触れる記事が掲載されています。
掲載当時大きな感動を呼んだ、
言の葉墨彩画家・ひろはまかずとしさんの
お話をご紹介いたします。
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実は私は、子どもの頃から字が下手でした。
普段書く字はもちろん、書道も絵も、
通知表の評価ではいつも1か2でした。
そういう人間がいま、
言葉墨彩画家として
たくさんのファンの方々に恵まれ、
一定の評価を得ています。
書家や画家の方から一度も非難を浴びた
こともなく、むしろそういう人たちの中にも
私のファンの方がいます。この事実は、とても
大きな教訓を含んでいると思うのです。
中学時代のある日のことでした。
国語の先生がお休みで、
代わりに教頭先生が授業を
受け持ってくださったことがありました。
教頭先生は「きょうは習字をやろう」と
おっしゃり、字の嫌いな私が憂鬱な思いを
抱いていると、教頭先生は半紙を一人20枚
ずつ配り、「横棒の一だけを書きなさい。
一に決まりはないから、何も考えずに
あなたの一だけをひたすら書きなさい」
とおっしゃったのです。
教頭先生は黙々と書き続けている生徒の周りを
回り、各々の字を褒めては頭を撫でてください
ました。私はその時間中に30回くらい
頭を撫でられました。
文字で褒められたことのない人間が、
一という文字を書いただけで褒められた。
私にとっては、目から鱗うろこが
落ちるような嬉しい体験でした。教頭先生は
授業の終わりにこうおっしゃいました。
「文字はすべて、この一の組み合わせなんだよ。
だから、素晴らしい一を書ける人間に
素晴らしい字が書けないわけがない。
書けないのは、格好いい字を書こうとか、
見本通りに書こうと思うからで、
一本一本思いを込め、愛を込めて書くだけで、
自分にしか書けない素晴らしい字が出来上がる。
このことは、人間の生活すべてに当てはまる
ことなんだよ」
その教頭先生の言葉がいまの私の創作活動、
そして人生を支え続けてくれていると
言っても過言ではありません。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!