「命もいらず、名もいらず、官位も金も
いらぬ人は始末に困るもの也」。
西郷隆盛がそう称し、江戸無血開城の立
役者として名高い幕末の英傑・山岡鉄舟。
本書は鉄舟が創建した全生庵の住職を務める
著者が、鉄舟の言葉を四十二篇精選し、
解説を綴った一冊です。
「学ビテ不成ノ理ナシ。
不成ハ自ラ不為ナリ」
(やってできないことはない。
できないのは努力が足りないからだ)
「夫レ剣法正伝真ノ極意者、
別ニ法ナシ」
(剣法の極意を会得するのに特別な道はない。
努力を積み重ねていくのみである)
「古人云、業ハ勤ムルニ精シト。
勤ムルハ必至其極。
諸学ノ人、請勿怠」
(先人は言っている。何事であれ一所懸命
勤めることだ。
一所懸命勤めれば必ずその極に至る。だから
学ぼうとする人は決して怠らないことだ)
鉄舟は剣・禅・書の達人といわれますが、特別
何かに秀でた人でも、頭脳明晰の人でも
ありませんでした。
それでも幕末の三舟として鉄舟と並び称される
勝海舟は、「馬鹿もあれ位な馬鹿になると
違う処がある」と鉄舟を評します。
著者も言うように、愚直に努力を積み重ねる
才能こそ、 鉄舟が持つ最大の魅力と
言えるのではないでしょうか。
今年没後百三十年を迎える鉄舟。 その歩みと
言葉は、現代に生きる私たちの貴重な
羅針盤となることでしょう。
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西郷隆盛や勝海舟も感服した幕末の
英傑による金言集
『山岡鉄舟 修養訓』
平井正修・著
定価=本体1,200円+税
著者は昭和42年東京都生まれ。平成2年学習院大学
法学部政治学科卒業。
静岡県三島市龍澤寺専門道場入山。13年同道場下山。
15年より中曾根元首相や安倍首相などが参禅
する全生庵の第七世住職に就任。
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!