歌手の小澤綾子さんが筋ジストロフィーと
診断されたのは二十歳の時でした。
いくつもの苦難を経て小澤さんが歌手として
歩み始めるまでの話の一部を紹介します。
───────「今日の注目の人」───
☆ いまを精いっぱい生ききる ☆
小澤 綾子(歌手、会社員)
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堪え続けた違和感の正体がようやく
判明したのは、二十歳の頃。
手すりなしで階段を上れなくなると、私は
覚悟を決めて、大学病院に行きたい
と両親に伝えました。
再検査で告げられたのは、進行性の難病、
「筋ジストロフィー」という病名でした。
一時は自分の違和感が証明されたことに
ホッとしましたが、「具体的な治療法
も薬もありません。
筋力はどんどん衰えていき、十年後に
車いす、最終的には寝たきりになるで
しょう」と告げられると、私の心は
凍ったように冷たくなりました。
将来への不安、思い描いていた夢を
諦めなければいけない現実に、もはや
自分は何のために生きているのか
分からなくなってしまったのです。
それから三年間ほどは何も手につかず、
ぼーっとした日々を送りました。
転機になったのは、リハビリの先生
との出逢いでした。
当初は「どうせ病気を治せないのに」
などと斜に構えていた私でしたが、
病院に行く度に、同じ病を抱えながら
も世間で活躍する方の話や、ご自身
の体験談を聞かせてくれ、私を
なんとか励まそうとしてくださる姿に、
少しずつ信頼が芽生えたのです。
とりわけ先生の言葉の中で私の心を
大きく変えてくれたのは、次の
ようなひと言でした。
「そんなに下を向いてばかり、暗く生きて
いたら、あんたの周りには誰もいなく
なってしまうよ。一人寂しく死ぬのかい?」
その言葉にハッとされられた私は、
「なんとか先生を見返したい。
車いすになる前にやりたいことを
全部やってやろう!」と決意。
海外旅行を皮切りに、語学留学や
ダイビングのライセンス取得など
やりたいと思っていたことに
挑戦し始めました。
挑戦の度に先生に報告に行きましたが、
「もっと本物に出逢いなさい」
「もっと将来を見据えて深く行動しなさい」
と、なかなか褒めてくれません。
それでも挑戦を続ける中で、いつしか……
※小澤さんのその後の歩みはぜひ
本誌でお読みください。
『致知』2017年4月号
連載「致知随想」P85
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!