アジアは中華圏の中に着々と飲み込まれていか
ざるを得ないのか――。骨太のロジックで
構成されたこの本からそれが「現実」
のものとして浮かび上がる。
本書のような想像力を持たずして、この怪異
なるアジアとは付き合うことさえ難しい。
中国が韓国を買収韓中連合艦隊が津軽海峡に
迫る―。日経新聞ベテラン記者が描く
迫真の近未来小説。
香港人、台湾人、フィリピン人、マレーシア人、
シンガポール人、タイ人。10年も前からアジア
の知識人に会うたびに、「日増しに膨れ上が
る中国にどう対応すべきか」「米中間の
対立が先鋭化した際にどう生き延び
るか」を聞いてきた。
快刀乱麻と呼べる明快な答えは誰からも
得られなかった。だが誰もがこの問題を
真剣に考えていることは分かった。
彼らは何らかの意味で中国台風にさらされ
ながら生きてきた人々か、その子孫である。
同時に、日本人がいかに中国を知らないかも思い
知った。東アジアのほとんどの国が中国の度
重なる侵略を受けるか、あるいは中国
の移民を受け入れてきた歴史を持つ。
「韓国人はついに中国世界で生きることを覚悟
したのだな」と考え、この本を書こうと思った。
中国と数千年間も直に向き合ってきた朝鮮半島
の人々が、再び台頭した巨大な隣国の勢力圏
に心ならずも戻っていく。それは日本
にも死活的な影響を及ぼす。
はじめはノンフィクションとして書こうと
した。だが、すぐにその難しさに気付いた。
自らの筆力のなさを棚に上げて言うなら、
朝鮮半島に差し始めた中国の影をいく
ら丹念に集めて記しても、日本人
に我が身のことのように実感
を持って読んでもらうのは
容易ではない。
空に黒雲が満ち、生温かい風が吹いてきても、
台風というものを体験したことのない人は、
それが台風の予兆だと想像できない
のと似ている。
そこで記者としてははなはだ邪道ながら、「朝鮮
半島に近未来に吹き荒れる中国台風」を
フィクションとして描いた。
ただ、本当に読んでほしいのは「近未来」部分
よりも「なぜ、その未来が起こりうるか」を
述べた「現状分析」のくだりである。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!