「敗軍の将」旧幕臣・大鳥圭介は、近代日本
の「工業教育の父」「高級外交官」として
不死鳥のようによみがえった。
これまで重視されなかった大鳥のテクノ
クラート(高級技術官僚)の側面にも光を
あてた初の力作評伝。
大鳥圭介は、日本の蘭学者、幕臣、官僚である。
青年期に漢学、蘭学、西洋医学、そして
江戸に出て西洋軍学を学ぶ。
その後、幕府の歩兵奉行にまで取り立てられた。
戊辰戦争では榎本武揚らとともに函館五稜郭
で抵抗するが降伏し、投獄される。
1872年に出獄し、その見識が高く評価されて
新政府に出仕し欧米を視察。
帰国後は高級技術官僚として工部省などで
産業の近代化に貢献した。
本書は、五稜郭の「敗軍の将」が、激動する
文明開化のなかで剣をペンに持ちかえて、
その半生を日本の産業、工業の発展に
捧げた、不撓不屈の魂、知識人と
しての大鳥圭介の生き様に光
をあてた評伝である。
幼少の圭介は聡明で3歳のとき両親に連れ
られて村の神社に参拝した際、「天下泰平」
と筆書きし周囲の人たちを驚かせた。
祖父純平は幼い孫の素質を見込んでみずから
私塾で四書五経を素読させ算術を教えた。
教えるとすぐに暗記する圭介は
「神童」と呼ばれた。
教授有吉譲介は父直輔に書状を送り、圭介の
詩文の作成や読解の才能が並外れて
優れていると絶賛した。
ここで後年の書家の素養が培われた。
圭介は、理工科系の知性を兼ね備えた
名文家であった。
圭介はオランダ翻訳本を読み返すうちに未知
の科学文明に取りつかれるようになり、この
学問を追求したいとの思いに駆られた。
漢学を勉強した際の経験から、
原書の濫読は不可欠と考えた。
彼は朝早く起きて机に向かい、睡眠時間を
惜しむ猛烈な勉強の成果もあってオランダ
語の専門書も一通り読めるようになった。
高崎哲郎『大鳥圭介:威ありて、猛からず』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!