歴史.法律.経済.軍事等々の知識も身につけていないと駄目なのだ = 3-1 = 第1,496号

 ウクライナ問題も、「イスラム国」も、新聞が

言うほど善悪は単純ではない。世界はワルで

満ちている。弱肉強食の新しい世界の中

で日本は二枚腰三枚腰の外交が求め

られている。北朝鮮や中央アジア

諸国などのワルの外交に学ぶ

ところは多い。元ウズベキスタン大使

が実体験を交えて説く、本当の外交の世界。

 この本は二つのことを提案する。一つは、日本人

はもっと「ワル」になって、巧妙・老獪な広報・

宣伝合戦を展開していこう、ということ。

 そしてもう一つは、この世界を動かすものは高邁

な理念とか理想より赤裸々な利益であることを

肝に銘じて、高邁な理念のウラに隠れた真

実の動きを見極めてから行動しよう、

ということである。

 僕はこの四十五年、ソ連・ロシア、西欧、米国、

あるいは中国、アジアと日本を行き来する生活

を繰り返しつつ、数多くの歴史ドラマをそ

の渦中、またはそのすぐ側からつぶさに見てきた。

 僕が無批判に信じ込んでいた「自由」とか「民主

主義」といった価値観も、アメリカが「イラク

は大量破壊兵器を作っている」という偽情報

をかざして武力で攻め入った時、その輝き

を失った。なんのことはない。自由、

民主主義を享受できるのは、強く、

豊かな者だけなのである。この

経験が、世界を見るには「ワルの目」が

必要であることを教えてくれた。

 ワルの外交四十八手。外交官というのはすれっ

からしの現実主義者、いやほとんどヤクザ、

それも敬語で罵り合うヤクザだと思えばいい。

 外交と言うと外国人とつきあう、何か大変で、

わけのわからない高尚なこと、または逆に

意味のないことをやっているように思

われがちだが、実は他国とのがさ

つな力比べ、相手国への食い

込み競争なのである。

 僕が長年勤務したソ連・ロシア、ソ連から独立

した中央アジア諸国、ヨーロッパなどでは海千

山千、すでに何千年もの伝統があるすれっ

からしの外交、ワルの外交が行われている。

 ものごとは理念より利益で動かす。よく、外国

では自由なディベートでものごとが決まると

言われるが、それも時と場合によりけり

で、日本の政治でもよく使われる「根

回し」(内々の調整)は外国でも

大事なのだ。ただしテレビな

どに出る時は、各国の代表(大使)は

メモを見ずに自国の立場を立て板に水を流す

ように説明する。黒のものを白と言い含め、

白は黒だと言いくるめ、しかもスマイル

を絶やさずにだ。これができる日本

人はめったにいない。

 このように国連や国際政治の場では、各国政府

や代表個人の利益や思惑がからみ、もつれ

合う中で、ものごとは決まっていく。

 首脳と首脳の間の好き嫌い、そして首脳間の「貸

し借り」の関係もものを言う。貸し借りとはカネ

のことではなく、「この前、案件Cでは譲って

もらったから、今度は案件Dで向こうの首

脳に譲ってやろう」というような関係のことである。

 世界では、自分にとっては何がいいのか、何が

必要なのかは、自分の頭で考えている。それは

アメリカだけではなく、ヨーロッパでもロシ

アでも韓国でも、「民主主義がない」と

言われている中国でさえ、まず「自

分」から出発している。

 河東哲夫『ワルの外交。日本人

      が知らない外交の常識』

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 今回も最後までお読みくださり、

       ありがとうございました。感謝!

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