外交交渉では、総理、外相、あるいは交渉
団長の判断とパフォーマンスが決定的に
重要なことは事実だが、その前に国
内の諸勢力の間に根回しをして交
渉の落としどころを探らなければならない。
いずれの国でも「外交は内政の延長である」
と言われるが、超大国のアメリカもその
例外ではない。本来であれば一貫した
外交戦略を自力で実行できる力を
持つアメリカでさえ、内政に
振り回されてしまうのである。
「外交」の半分は「内交」。
だから大きな外交問題を片づける時には、
官房長官・副長官を筆頭に立てて各省を
調整し、関連議員・業界・地方を納得
させ、マスコミを通じて世論の了解
も取っておかないといけない。
ことほどさように、どこの国でも「外交は
内交」なのである。外交官と言うが、実は
その半数以上は国内の本省や総理官邸に
勤務していて、関係各省庁との間で
いつも調整をしている。案件に
関与している国会議員や政党
要職者に説明をして歩き、関係
諸団体や業界から話を聞き、マス
コミの論説委員や記者たちに案件の説明をする。
「民主主義」─利権の交通整理。
政治とは高邁な理想を実現するもの、素晴ら
しいアイデアを実現するもの、と言うよりは、
理想という旗印の下で赤裸々な利権闘争を
やるもの、と言ったほうが現実に近い。
国際政治の表と裏─NGOの力。
ところが先進諸国が世界を治める力は、
BRICS以外の諸要因によっても侵食
されつつある。先進国のNGO、
英米の金融大資本、そして
闇の世界で活動するテロ、麻薬、
傭兵のような勢力が、国際政治を大きく
動かすようになっているからである。
国際ビジネス、外交のできる人材育成を。
外交や国際化は「何くそ」の精神で。
外交や国際ビジネスに携わる日本人はタフで
なければならない。ワルでなければならない。
優等生ではだめで、「何くそ」という気持
ちでいつも生きていく。「日本」のブラ
ンドで何でも売れるという時代は過ぎ去った。
「何くそ」と言っても、むやみやたら外国人を
敵に回すというのではなく、外国人の中にとけ
こんで、自らリーダー、参謀、そして情報
機関の三役を兼ねる、クールな
「何くそ」なのである。
この本は、こうして忘れてしまった自立のスキ
ルを取り戻すためのものである。世界という
大海の波は荒い。そこでは国家とか民主
主義とか美しい言葉は、各国の都合
に最もかなった意味を与えられ、
論戦での武器として互いに
投げつけられている。
そんなものに惑わされず、これを自分の武器と
して使えるようにするには、ワルにならねば
ならない。言葉や理想のためではなく、自
分の利益のために戦うのが外交である。
そして同じことは、企業の国際化も言える。
買収した企業を指図するのでなく、指図さ
れるようになってしまうような、ひ弱な
「会社員」ではなく、少々英語はでき
なくとも外国人を平気で使いこな
せるワルの「企業」を増やす
ことが、これからは必要である。
河東哲夫『ワルの外交。日本人
が知らない外交の常識』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!