東京帝国大学の林学博士として長きにわたり教鞭
をとる傍ら、日比谷公園のほか数百の公園を設計
し「公園の父」と呼ばれた
本多静六(ほんだ・せいろく)。
静六は学者である一方、独自の金銭哲学をもとに
一代で巨万の富を築いた蓄財王でもありました。
そんな静六の姿を、東京工芸大学の学長を務めた
令孫・本多健一氏に語っていただきます。
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私たちが祖父から引き継いだ訓え、あるいは家風
と言えば、我が家には「人生即努力、努力即幸福」
の書が掛けられていました。
祖父はこれをいつも口癖のように言っていまし
たし、人に頼まれて何か書く場合にもこの言葉
を書きました。
また、これは祖父が実践していたことで、
私が引き継いでいるわけではありませんが、
祖父は食後の休息、唾眠を心がけていました。
勤めから帰ってきて夕飯を食べるとすぐに寝ます。
それで夜中に起き出して朝方まで書き物の仕事
をしていました。
昼もそうで、昼食の後に家にいれば昼寝を1、2
時間して、それからまた書き物をしていました。
祖父は85歳で亡くなりましたが、120歳まで
生きるとよく言っていました。健康には自信を
持っていたのです。その祖父の健康法の一つが、
この食後の休息、睡眠にあったのは確かです。
祖父はまた、生涯「倹約」を通した人でしたが、
晩年の多額の寄付や、到来物のおすそ分けの実践
などを考えても決してけちではありませんでした。
祖父の残した人生訓にはまた次の言葉があります。
「感謝は物の乏しきにあり。幸せは
心の恭倹にあり」
物が乏しいほど心はむしろ豊かに幸せになると
いうのです。現代日本の荒涼とした精神風土に
物質的繁栄が関係していることは否定できない
と思います。
「物を求めず、何事にも努力し、心を恭倹に
保ちさえすれば、誰もが幸せな人生を送る
ことができる」
祖父・本多静六は私たちにそう語りかけて
いるのです。
※本記事は『致知』2000年8月号 特集
特集 「異質化する」より一部抜粋したものです
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!