『1日1話、読めば心が熱くなる
365人の仕事の教科書』。
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【1月23日】
「一度は死に物狂いで物事に打ち込んでみる」
安藤忠雄(建築家)
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中学二年の時に平屋の自宅を
二階建てに改築することになりましてね。
近所の若い大工さんがお昼休みも取らずに、
パンを齧りながら一心不乱に働いている姿を
見て、すごいなと。
この人は真剣に生きてる、
仕事に誇りを持って働いてる、
自分も建築の道に進みたいと思ったんです。
もう一つ、杉本先生の存在も大きかったですね。
杉本先生は中学の数学の先生で、
まさに熱血教師でした。
杉本先生がいつも全力で熱心に教えてくれた
ことで、勉強嫌いだった私も数学だけは
理解できたんです。
職人の仕事と数学への興味が重なるところに
建築の世界があった。
ですから、若い大工さんと杉本先生に
出逢ったことが原点ですね。
家が貧しかったから、早く稼いで祖母を
楽にしてあげたいと思ってました。
高校生の時に双子の弟が
プロボクサーになったこともあって、
ボクシングジムを見学したら、
当時サラリーマンの給料が一万円の時代に、
四回戦のファイトマネーが四千円なんですよ。
えっ、喧嘩してお金くれるの?
こりゃええなと。
一か月くらい練習してプロになったんです
けど、後に世界チャンピオンとなる
ファイティング原田が練習に来た時に、
圧倒的なレベルの差を実感しました。
才能というのはあるんですね。
それでさっさとやめました。
経済的な事情と学力の両方の理由から
大学には行けず、建築の専門教育も
受けられなかった。
ならば自分で勉強しようと。
十九歳の時に、建築学科の学生が四年間かけて
学ぶ専門書を一年で全部読もうと決心し、
毎朝九時から翌日の朝四時まで机に向かい
ました。
睡眠時間は四時間。
四月一日から翌年の三月三十一日まで、
ほとんど外出もせず、無我夢中で勉強
したんです。
「おまえは学校へ行ってない。
ハンディキャップがある。
でも、ハンディキャップは意外といい。
頑張るから」
と祖母が言ってましたけど、
いま振り返るとその通りだと思います。
その後、昼はアルバイトをし、
夜は通信教育で建築やデッサン、
グラフィックデザインなどを手当たり次第に
学び、休みの日は奈良や京都へ行って、
東大寺や法隆寺といった壮大なものから
茶室のような小さなものまで、
ありとあらゆる伝統的な建築を見て回る
生活を送りました。
二級建築士と一級建築士の資格を取る時も、
いずれも一発で合格しようと覚悟を定め、
仕事の仲間と昼食に行く時間も惜しんで、
パンを二つ食べながら一人黙々と
建築の専門書を読んでました。
「安藤は頭がおかしくなったんか」
と冷たい視線を向けられたりもしましたが、
おかげで両方とも一発で合格することが
できたんです。
若い頃に、一度は死に物狂いで
物事に打ち込んでみることが必要です。
目標を定めたら何が何でも達成するんだと
いう意志を持たないと。
独学であっても強い覚悟と実行さえあれば
道は開ける。
これは私の実感であり、
体験を通して掴んだ一つの法則です。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!