深い霧に覆われた情報組織、これが公安調査
庁だ。一般の目が届かない深層で情報活動を
繰り広げ、決して表舞台に出ようとしない
組織。逮捕権を持たないため、人の心の
襞に分け入るヒューミント(対人諜報)
に存在意義を見出している。
公安警察や外務省と情報コミュニティーの
主導権を競う公安調査庁。インテリジェン
スの巨匠ふたりは、その素顔に切り込み、
過去の重大事件の裏側を初めて論じて
みせた。いま公安調査庁から目が離せない!
インテリジェンスとは、国家が生き残る
ための選り抜かれた情報である。
国家の舵取りを委ねられた政治リーダーは、
彫琢し抜かれ、分析し抜かれたインテリ
ジェンスを拠り所に、国家の針路を決める。
だが、コロナ禍に直面して、日本をはじめと
する各国の政治指導者はインテリジェン
スを手にしていなかった。
今回ほど精緻なインテリジェンスを、そして
インテリジェンス機関の必要を痛感
させた事態はない。
国家の災厄をいち早く掴む情報組織の責務
がいかに重いのか、尊い犠牲を払って
我々に教えてくれたのである。
強権国家は不都合な真実を隠したがる。
それゆえ、報道統制を敷く大国の懐深く
に情報のネットワークを張り巡ら
しておくべきだった。
「公安調査庁」という一般にはほとんど実態
が知られていないインテリジェンス機関を
取りあげ、本書を編もうと取材に取り
かかったのは、コロナ禍が起きる前だった。
戦後日本の独立と軌を一にして発足したこの
政府組織は、逮捕権も持たず、強制捜査権
もなく、外交特権に守られた在外の
情報要員も持たない。
国からの予算も少なく、人員も限られており、
納税者からも存在を認められているとは言い
難い。いわば「最小にして最弱」の
機関と見なされてきた。
だが、中国の武漢で特異な感染症が起きて
みると、幾重もの国家機密の壁を乗り越
えて、強権国家の奥深くで何が起きて
いるのか、その実態に迫ることが
できるインテリジェンス機関
は、公安調査庁を措いて他になかったのである。
公安調査庁は、かつてオウム真理教が起こし
たサリン事件を手がけた経験を持ち、生物・
化学兵器に対する豊富な情報を蓄積している。
世界の感染症とウイルスの専門家から貴重
なヒューミント(人的情報収集)を集めて
収集・分析し、政治の意思決定に貢献
できる潜在力を秘めている。
未曽有のパンデミックに見舞われたいま、
独自のインテリジェンスこそ、ニッポン
が生き残る力となる。
手嶋龍一『公安調査庁。情報コミュニ
ティーの新たな地殻変動』
の詳細、Amazon購入はこちら↓
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!