深く問う、とはこういうことだ。個から国家
までを貫く思索の轍(わだち)をたどる。
本質的にとことんまで考え、向き合った
吉本隆明の格闘の記録でもある。「個人
幻想」「対幻想」「共同幻想」という
3つのキーワード。吉本の主著と
され、戦後、日本人が国家について
考えた最高峰とされる『共同幻想論』、
その現代的意義に寄りそいながら読み解く。
同時代を生き、『共同幻想論』が発した爆発的
威力を知っている世代だけではなく、それ以外
の人たちにも戦後最大の知識人、吉本隆明
に入門できる格好の解説書。
かつては、ご近所さんや親類など、醤油の
貸し借りから家庭のモメごとの仲裁まで、
私たちを見守る存在が周囲にいた。
熟議と人々の対話を何より重視する民主
主義は、本来、時間性を特徴とする。
時間をかけてでも他者の意見を尊重し、すり
合わせ、最終的な多数決の原則に従う。
それが民主主義のルール。
現代のような「多忙な時代」に待ったを
かける独自の迫力と深さをもった書が、
吉本隆明の『共同幻想論』である。
吉本隆明の『共同幻想論』は、直接的には
『遠野物語』と『古事記』の2冊を徹底的
に読み込むことで、国家誕生の瞬間を
追いかけた作品である。
文学とは、徹底的に個人の人生
にこだわる営みである。
情報こそ、現代最大の「共同幻想」に他なら
ない。多くの人が毎朝、パソコンやスマホを
見る。そこに羅列される不祥事、タレント
のスキャンダル、政治の醜聞をみて、
我々はそれを「現実」だと思い込む。
吉本隆明ならば、スキャンダルの羅列を決して
現実とは、思わないだろう。それより、スマホ
から眼を離して深呼吸をして、となりの同僚
と会話すること。組織改良のための面倒な
会議の連続をいとわないこと。こうした
些細な諸事の積み重ねこそ、現実だと
言うであろう。
先崎彰容『吉本隆明・共同幻想論。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!