本書は、落語黄金期と言われた三越演芸会
を彩った天才落語家12人の名人にスポッ
トをあて、極めて貴重な名人直筆の
「感どころ」(梗概)から、いか
に名人達の至芸が演じられ
たのかを掘り起こします。
直筆の「感どころ」には、現名人が、
先代の噺家が守り演じ続けた落語
とは違った観点、自分流の笑
いをとるための創意工夫
された噺の筋が記されています。
落語は演じ手も聴き手もそれぞれの心の
中に情景を思い思いに想像し、描き、
イメージを創り上げる噺芸です
そのような裏事情がところ
どころに垣間見られ読
み取れる資料による解説本。
「感どころ」においてのポイントを紹介
させていただくと、志ん生は文章にお
いても感性を重視、文楽は噺のデ
ィティールへのこだわり、
⇒円生は心理描写及び落語の歴史、三木
助は粋な落語の美学、金馬は己の博識
とあらゆる書物からの落語に対す
る研究、小さんは芸に対する
真摯な姿勢、正蔵は映像
的に噺をとらえている、云々─。
現代の落語家の多くは、噺のルーツを
調べようともせず、無頓着な状態
で落語を語っています。
先人を知ることが、そして先人に対する
尊敬の念こそが伝統芸能を発展させ
る大きな要因だとわたし
は思っています。
わたしを含む現在最先端にいる落語家は
己の感性を信じて好き勝手に演出して
落語を演じているが、先人たちか
ら教えを請う姿勢がなければ
伝統芸能としての落語は
やがて滅んでしまう
のではないかと
いう思いが、
今回の「感どころ」
を読み進めていくうち
に大きくなっていきました。
本書は落語の貴重な資料であると共に、
現代落語のバイブルになればよい
と思っております。
昭和落語の最高峰、また師匠談志
が一番憧れていた落語家。
生の高座を見たことのないわたしでも
落語を聴き始めたきっかけに当然
志ん生師匠は入っています。
わたしが一番最初に好きになったのは三代
目金馬師匠、もちろん古い映像ですが─。
今でこそ落語界において昭和の最高峰は
志ん生師匠ですが、当時は文楽師匠へ
のライバル心はあっても、自分の
ポジションがそんなに高いと
ころにあるとは当然思っ
てなく、実際、評価
だって今ほどではなかったと思います。
立川志らく『落語名人芸
「ネタ」の裏側』
の詳細、amazon購入はこちら↓
今年の配信はこれが最後となります。
次回、2019年にお会いしましょう。
今年も1年「生きる・食」をご愛読
いただき、誠にありがとう
ございました!
みなさまもどうぞよい年越しを、
そしてよい年をお迎え下さい。
来年も引き続き、よろしくお願い
申し上げます。
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!