トランプ政権発足後、アメリカ合衆国の分断
傾向はさらに顕著になりつつある。しかし、
そもそもアメリカは、建国以来、分裂
の要素を持ち続けている国なのだ。
日々刻々と動く世界情勢の中、特にその動向
が注目されているアメリカ合衆国の歴史的
事実を知ることで、日本とは切っても
切れない関係にある。アメリカ分
断の歴史は、ここから始まっていた…!
米国10ドル紙幣の肖像となっているアレグ
ザンダー・ハミルトン。ジョージ・ワシン
トン初代大統領の右腕としても活躍し
た若き政治家は、分裂に傾くアメ
リカ合衆国をいかにしてより
強固な統合国家にしようと努めたのか。
建国期、バラバラな13植民地の寄せ集めに
すぎなかった分裂国家アメリカを、真の
統合国家に創りかえようとした
天才政治家がいた。
彼の名は、アレグザンダー・ハミルトン。
「建国の父」の一人。アメリカ独立戦争
時、ワシントン総司令官の右腕として活躍。
彼は独立戦争後は合衆国憲法の制定に大きく
貢献。その後、ワシントン政権における初
代財務長官として、高度に体系化され
た経済財政政策を立案・実行、新生
国家アメリカを破産の淵から救った。
ハミルトンは、並外れた知性と行動力を持ち、
自信と情熱にあふれ、強固な統合国家アメ
リカの創造という確固たる目標に生涯
を捧げた天才政治家だった。
彼の出自は決して恵まれたものではなかった。
彼はたたき上げの天才だった。西インド諸島
ネーヴィス島でスコットランド貴族の
非嫡出子として生まれ、母親
と早くに死別。
孤児となったが、友人と親戚の支援でニュー
ヨークに移り、貿易商の仕事に携わる。
己の才覚を頼りに、17歳でキングス・カレ
ッジ(のちのコロンビア大学)を卒業。
独立戦争に従軍し、ワシントンの
有能な補佐官として頭角を現す。
地元の有力な資産家スカイラー家の令嬢
イライザと結婚し、上層階級の
仲間入りを果たした。
経済財政政策から法理論、軍事・外交に至る
まで、あらゆる国家行政の分野に通じ、超
人的な文章の才と先見性にあふれ、アメ
リカ発展の礎を築いた天才政治家であった。
しかし1804年、政敵との決闘で肝臓を打ち
抜かれ、49歳の若さで生涯を閉じた。
水川明大『分裂国家アメリカの源流』
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