漢字の「九」と「鳩」。
幼い子供たちにとって、
どちらの文字が覚えやすいでしょうか。
意外にも答えは「鳩」なのです。
簡単な漢字が実は覚えにくくて、
覚えにくそうな漢字が実は覚えやすい──。
長年の実験の結果、
私たちの常識を覆す、そんな事実を掴んだのが
「石井式漢字教育」の考案者・石井勲氏です。
漢字教育の威力について語られた
1999年1月号の記事を紹介します。対談の
お相手は東京大学名誉教授の宇野精一氏です。
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(石井)
たとえどんなに難しい字であろうと、
仮名と漢字を一緒に教えると、
どんな子供でも漢字のほうを先に覚えます。
私は小学校で14年間実験しましたが、
実験してみてわかったのは、もっとも
遅れているような子供は1年かかっても、
仮名が覚えられない。ところが、そういう
子でも漢字だったら覚えるんですね。
そしてもう一つわかったことは、私たち大人が
易しいと思っている漢字は難しいんです。
難しいと思っている漢字のほうが
子供たちにとっては易しいんです。
(宇野)
あれは四谷の小学校だったかな。
やはり僕が見に行ったとき、
クラスで一番遅れているだろうなという子が、
鳥と烏という字の区別をちゃんとできた。
「鳥じゃないのかい」と訊いても「烏だ」という。
おそらく石井先生が烏は黒くて目がよく見えない
から、字の中に「目」がないんだと教えて
おられたと思うんですが、非常に驚いたことを
覚えていますよ。
(石井)
そうでしたね。大人は、鳥でも鳩や鶴などと
いう字は難しいと思っていますが、
子供にとっては鳥という字より
鳩や鶴のほうが簡単なんです。
(宇野)
それは鳩という具体的なもののほうが
イメージが鮮やかだからだろうね。
(石井)
そうなんですね。虫でも、
ただ虫というだけでは、その子によって
思い浮かべる虫が違いますね。
しかし、蝶とか蟻とかいうと、
まさにそれは蝶であり、蟻であるわけですから、
簡単に覚えるんです。
だから私の教育では虫という字より先に、
蝶とか蟻とか蝉という字を教える。
実験してそういうことがわかったのですが、
6年生までその調子で覚えていってくれるか
というと、そうはいかないのですね。
14年間の実験でわかったのは、
記憶力は1年生のときが最高で、
あとは衰えていくばかりなんだという
ことです。
そこで1年生より前、
つまり幼児教育を始めようと考えたわけです。
(中略)
昭和45年に講談社から『漢字による才能開発』
という本を出しましたが、その本を
読んだ東京の杉並のお母さんが、生後10か月
から子供に漢字教育をやったというんです。
すると、1歳半で300の漢字が
読めるようになったというんですね。ほんと
だろうかと、信じられない思いで訪ねて
行ったら、ほんとに読めるんです。
もちろん1歳半ですから、
正確な発音はできませんよ。
けれども、注意して聞いていると、
ちゃんと区別して読んでいるんです。
その子はいま、30をちょっと
超えた年齢になっていますが、東大の医学部
で前人未踏の研究をやっていますよ。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!