税率の低さは世界から企業と人材とカネを呼び込む 第1,086号

 巨大経済を誇る「ボリューム国家」中国、

アメリカに日本が対抗する唯一の方法は、

スイス、シンガポールのように、小国

であっても高い国際競争力を持つ

「クオリティ国家」になることである。

 現在の日本はどういう状況

になっているのか。

 ひとことで言えば、「中途半端な国」

になっているのである。

 人材の質も中途半端で、人件費が

高いのに付加価値力や特にサー

ビス業の生産性は低い。

 一方、今世界で繁栄している国は

ふたつのタイプがある。

 ひとつは「ボリューム国家」だ。

 経済規模が巨大で、人口・労働力のボリ

ュームと低コストの人材費を強みとして

工業国家モデルで急成長している。

 その代表がBRICsのブラジル、

ロシア、インド、中国だ。

 もうひとつが「クオリティ国家」

と呼んでいる国々である。

 経済規模は小さく、人口が300万~1000

万人、一人当たりのGDPが400万円以上。

 世界の繁栄を取り込むのが非常に

うまいという共通点がある。

 人件費は高いが、それをカバーする付加

価値力と生産性の高い人材が揃っている。

 規模の拡大を目指すボリューム国家に

対して質の向上を目指す国家であり、

スイス、シンガポール、フィン

ランド、スウェーデンが典型だ。

 クオリティ国家の大きさは、日本が道州

制になった場合の道州と同じくらいだ。

 ならば、日本は早急に道州制を導入

し、各道州がスイスやシンガポール

やフィンランドなどを参考にしな

がら、思い思いの戦略を立てて

自立したクオリティ国家を目指せばよい。

 クオリティ国家の特徴は、世界に出て行く

だけではなく世界からヒト、モノ、カネ

や企業、そして情報を呼び込むため

に税金体系を自由に決めている。

 ほとんどの国は相続税がゼロで所得

税や法人税も安いことである。

 ところが日本は加工貿易立国の工業

国家モデルのままだから、いまだに

出て行くことばかりを考えている。

 道州が世界の中で自立していくためには、

それぞれが自分なりの「クオリティ国家

像」を明確に描いていなければならない。

 質の高い国家、という考え方には、生活

の質、社会の質、教育の質、自然や街

並みの質、政治制度の質など、あら

ゆる断面で世界の規範となるよう

な質が実現されなくてはならない。

 クオリティ国家にとって、とりわけ

重要なのは「ブランド戦略」である。

 かつて私は、時計会社タグホイヤーの

ホイヤー名誉会長に、「もし、セイ

コーの再生を頼まれたら、どう

するか?」と質問した。

 彼はこう言った。「私を雇えばよい。

セイコーは時計を作ろうとしている。

 だが、現在の時計業界は時計を作る競争

ではなく、いかにブランドを維持して

高い付加価値をお客さんに認めて

もらうか、というブランド・

マネージメントの競争だ」

「ブランドを維持するためには、

1人のプロデューサーがいればよい。

 だから、私のように高級ブランドのマーケ

ティングを熟知しているプロを1人

雇って全部任せればよい」

 複数の「ハブ拠点」で世界を呼び

込むシステム構築のうまさ。

 シンガポールは、国家の中にさまざまな

「ハブ拠点」を作ることによって、戦略

的に世界から、ヒト、モノ、カネ、

情報を吸引している。

 実はアメリカは、ひとつの国家という

よりもクオリティ国家の集合体

というべき存在。

 税率の低さは世界から企業

と人材とカネを呼び込む。

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今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝

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