伊勢国一の宮で、猿田彦大神を祀る全国
二千余社の大本宮である椿大神社。
創建2025年という長い歴史を刻んできました。
その椿大神社は日々の掃除、挨拶に力を入れて
います。そこにはどういう思いが込められて
いるのでしょうか。
宮司の山本行恭氏と早稲田大学
名誉教授の池田雅之氏にご対談いただいた
『致知』6月号の記事の一部をお届けします。
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(山本)
先ほど、椿大神社では全神職が
毎日ご祈祷をしていると申し上げましたが、
私には3つの目標があるんですよ。
第一は「挨拶ができる神社」、
第二は「掃除ができる神社」。
挨拶と掃除は『小学』に出てくる通り、
人格形成の土台、修身における基本中の基本です。
そして第三はちょっと大袈裟ですが、
「祈祷の上手な神社」。この3つに関して日本一
の神社になりたいと思っているんです。
(池田)
素晴らしい実践的な決意ですね。
(山本)
当然まだそこまではできていません。
神職も巫女さんも毎朝参道を箒で掃き、
社殿の床を雑巾がけし、
境内をすべて掃除するんです。
早い職員は朝7時に来て行っています。
掃除の後は朝拝、全員で大祓詞を唱え、
社務所に移動して朝礼を行います。
そこでは、「はい」という素直な心、
「すみません」という反省の心、
「おかげさま」という謙虚な心、
「私がします」という奉仕の心、
「ありがとう」という感謝の心、
この五訓をはじめ、いろいろな言葉を唱和し、
心を整えてから皆それぞれ持ち場につくのです。
そして、16時半からまた皆で掃除をする。
立つ鳥跡を濁さず、
綺麗にして明日を迎えたいという氣持ちで
掃除を徹底しています。
(池田)
挨拶と掃除、それは生活上の祈りの基本
ですよね。挨拶や掃除をすることで、
他者への感謝の気持ち、
祈りの心が醸成されていくと感じます。
(山本)
そうなんです。
さらに当神社では、月に1回、多い時は2回、
神域にある滝で3時間の禊修行をします。
余計なことは一切考えず、
「祓へたまえ清めたまえ……」と
祝詞だけ唱えていく。そうすると
精神がスーッと浄化されていくんですよ。
──(中略)──
(山本)
挨拶と掃除にこだわっているのには
理由がありましてね。先代が亡くなり
宮司を継いで20年になるんですけど、
先代は大正12年の生まれで戦争経験者ですから、
とにかく厳しい人でした。
先代と同じようにはできないし、
いまの若い子には全く通じません。
そこで宮司になってまず始めたのが、
箒を持ち一人で参道を掃除し、
参拝に来られる方々に「おはようございます」
と元氣よく挨拶することでした。
そうしたら「おはようございます。
綺麗にしていただいてありがとうございます」
と感謝されたんです。
ああ、これだなと思い、全職員で
挨拶と掃除に取り組むことにしました。
(池田)
その実践の体験が宮司にとっての
原点となっているのですね。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!