『致知』創刊45年の歴史の中から、
後世に残したい珠玉のインタビューや
対談記事を厳選し、約800ページにまとめた
『一生学べる仕事力大全』。
2023年末の発売から1か月半で3刷が決定。
プレジデントオンラインや現代ビジネスなどの
各メディアでも紹介されるなど、
発売以来、大きな反響を呼んでいます。
また、最近では、会社の社員さんに
プレゼントされる経営者の方も増えてきており、
社員教育にも活用されています。
本書には、74名のプロフェッショナルによる
貴重な話が掲載されています。
本日はその一部をご紹介します。
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「師から学んだ精神を裏切らない仕事をする」
小川三夫(鵤工舎舎主)
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高校の修学旅行で法隆寺五重塔を見て宮大工
を志し、「法隆寺の鬼」「最後の宮大工棟梁」
と称された西岡常一棟梁に弟子入り。
師匠と寝食をともにしながら
一つひとつ仕事を覚えていった。
そこで学んだ物づくりの精神を引き継いで
「鵤工舎」を設立。
いま恩師のやり方にならって
若い工人を育成する宮大工・小川三夫氏に、
亡き西岡棟梁への思いを語っていただいた。
* *
――西岡棟梁に弟子入りした時、
カンナの削り屑を見せられて、それを
窓に貼っておいたという話がありますね。
棟梁が手本を示してくれたのは
そのカンナ屑一枚でしたな。
カンナで木を一枚すーっと切ってくれて
「カンナ屑はこういうものだ」と見せてくれた。
それをもらって窓に貼って、
そういうカンナ屑が出るまで、砥いでは削り、
砥いでは削り、練習するわけですわね。
――一枚のカンナ屑から師匠の意図を
汲み取っていかれたわけですね。
そうでなくちゃあかんわな。
自分が棟梁のところに行った時は、まず
最初に「納屋の掃除をしなさい」と言われた。
それで納屋に上がってみたら、そこには
法輪寺の引きかけの図面がありました。
それと西岡棟梁の道具がな。
「納屋の掃除をせえ」ということは
「それを見てもよろしい」という意味でしょう。
「あぁ、これで弟子入りを認められたんだ」
と思いましたよ。
それで次に
「これから一年間は、テレビ、ラジオ、新聞に
一切目をくれてはいけない。
物づくりだけをしなさい」
と言われた。何も分からないんだから
「はい、そうですか」と。
抵抗しようとも思いませんでしたな。
――それが学ぶということなのですね。
素直に素直に触れてないとな。
見て真似をするんだったら
素直な気持ちでなくちゃ
真似できませんからね。
批判の目があったら学べません。
うちの弟子なんかでも、素直じゃないと
本当の技術が入っていかないですね。
ちょっと知識があったとか中途半端な
勉強をしてきてると素直に聞けねえから、
往々にして間違いが起こる。
――半端な知識が邪魔になる。
知識があっても素直に物に触れることが
できる子は立派ですよ。
でも、なかなかいないな。
いまは学校でも時間がないから
深く教えないわけでしょ。
ちょっとした知識だけ持たせて世の中に
出してしまう。
だから、素直に物に触れることが
できない子が多いですよね。
そういう子は素直になるまで
怒り倒さなければ駄目なんですわ。
こっちも大変、向こうも大変ですよ。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!