現代日本を代表する書家 星 弘道さん、72歳。
そんな星さんを導いた人生の師、そして人生で
最も大切なこととは──
────────[今日の注目の人]───
☆ 人生の師に学んだこと ☆
星 弘道(全日本書道連盟理事長)
───────────────────
それから三人目の師は、私に漢詩、漢文を教えて
くださった猪口篤志(あつし)先生。
この方はね、まるで『論語』の世界に生きている
ような人で、人格的に立派な人でした。
猪口先生も教えるということに対してはすごい
情熱を持っていらして、教わろうという気のある
生徒にはもう徹底して教えてくださった。
それから全然偉ぶらない。
──いまも心に残る猪口先生の教えなどは
ございますか。
猪口先生がある教育者の方の例を挙げて、次の
ようなお話をしてくださったのはいまでも
印象に残っています。
ある日、その先生の講義には一人の生徒しか
来なかったと。
しかし、先生は「今日の授業はやめにしよう」
ではなく、逆に一人の生徒のためにもの
すごい情熱を持って講義をした。
そして、「どうして一人のために、そこまで
してくださるのですか」と質問した生徒に
対して、先生はこう答えた。
「たった一人でも、君が貴重な逸材かも
しれない。だから一人でも手を抜いては
いかんだろう」と。
猪口先生は、人を育てるとはどういうことかを
身をもって教えてくださった気がしますね。
(略)
──師の教えを愚直に実践されてきたことで、
目標や志を実現されてこられたのですね。
やはり、継続することが物事を成就させる
ために一番大事だと思いますよ。
私もぐっと燃え上がっては、途端に冷めると
いうか、性格的に飽きっぽいところがある。
その欠点が分かっていますから、毎日何でも
いいから書くことを自らに強いてきました。
──何事にも通じる心構えですね。
ええ。でも、書っていうのはこれで極めた、
これでもういいっていう世界ではなくて、
おそらく一生、生涯現役で苦しむよう
なものではないかと思っています。
例えば……
※一日も休むことなく書に向き合ってきたと
いう星さん。その一途一心の歩みの
続きは本誌でどうぞ!
『致知』2017年1月号
特集「青雲の志」P48
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!