転んでもタダで起きない労働者たちの「耐久力」。
中国東北部の労働者たちも、15年から20年ほど
前にすでに厳しい体験をしており、現在の経済
問題を決して青天の霹靂といった感覚では、
とらえていないのである。
「問題が山積みしていること」と「それが崩壊
へとつながること」は同じではない。
彼らは、自らの不満を、政治的な問題と結び
つけて考えようとはしない、という特徴を
持っている。実は理由は簡単だ。
彼らが怒りを表現するとき、その目的は社会を
変えることには向けられず、あくまで自らの
生活を良くすることに向けられるからだ。
中国人がどんなときも失わ
ない「サバイバルの鉄則」。
彼らは、どんな政権下(王朝の下)でも、どんな
国でも生きていける方法を常に模索し、選択して
きた。基本は「個(家族)」であり、国家が
倒れても「個」は生き残るという備えを怠らない。
共産党の幹部育成システムの中に「貧しい地域
の経営に携わらせ、中国の現実を教え込む」
との考え方が根付いている。
「亡党亡国」を防ぐ「ソ連崩壊」と
「アラブの春」という教訓。
かつて中国共産党は、ソ連崩壊という大地殻
変動に直面し、彼らの失敗からふたつの価値
のある教訓を得た。ひとつが民主化を急
ぎすぎてはならない、ということ。
もう一つが、腐敗により人心
が離反すれば取り返しのつかない
ことになる、という2点だ。
一部の特権階級だけが利益をむさぼるといった
状況は、まさに「アラブの春」で打倒された
国々に共通する特徴でもあった。
おそらく習近平は、国家副主席時代にこうした
世界の情勢をとらえて危機感を強めたのだろう。
対外的には「昼行燈」ともいうべき「無味
無臭」なリーダーとの下馬評を積み上げ
つつ、内では着々と政権移譲後の
ビジョンを練っていたのだ。
国家副主席時代の習の存在感の無さは、
筆者の記述を疑いたくなったほどだ。
だが、習近平は、「うつけ」を演じていたのだ。
そしてその裏で党内の根回しを行い、自らの
政策を実行する際に、最短で最大限の
効果をもたらす準備を進めていたのである。
考えてみれば2012年、中国は明らかにひとつ
の危険水域に足を突っ込んでいた。だが、
その中国に習近平が劇薬を投入した
結果、一定の効果が上がっている。
少なくとも彼らは、自分たちの欠陥がどこに
あるかを的確に見抜いている。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!