脳神経解剖学の世界的権威であり、
第16代京都大学総長を務められた平澤興先生。
今年で没後33年になるいまなお、
その教えは色褪せることなく多くの人々に
エネルギーを与えています。
「人間には無限の可能性がある」
「人間には140億個の神経細胞があるが、
それを全部使い切ったものは一人もいない」
人間に秘められた大いなる力と可能性を
生涯にわたり探究し続けた哲人の言葉は、
今日を生きる私たちにもなお力を与え、
明日への活力を湧きたせてくれます。
その教えを紐解くのに最適なのが、
『平澤興講話選集「生きる力」』(全5巻)です。
平澤先生の人柄を思わせる親しみやすい言葉で、
先生自身がいかに学び、いかに生きてきたかを
語りつつ、いまここに命のあること不思議さ、
有り難さにまで話は及んでいきます。
さて、本書には一体どのようなお話が
収録されているのでしょうか。
講話選集に収録されているお話の一部を
お届けします。
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中学二年の時にした
父親への悩み相談
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今から五十年くらい前でありますが、
私の家では絶対的な、いわゆる正しい意味での
自由主義でありました。
中学から先は、朝は絶対起こしてくれません。
たとえ朝寝をしていても絶対に起こしません。
なぜなら学校へ行くくらいのことは
自ら考えてやるべきことでありますから、
自分で考えろということであります。
私は中学二年の時に、ちょっとした悩みが
ありまして、父のところに手紙を書いて
送りましたら、
「それは自分が考えて決めなさい。
お父さんはお前が考えてよいということ
なら賛成だし、考えて悪いと思うこと
には反対である」
とそういうふうなことが書いてありました。
その時は、誠に愛想のない手紙だと思いましたが、
今にして思いますと万事そうでありました。
そのかわり、専門を決める場合にも
何をやれとかどこへ行けとかいうことは
一切干渉をしません。
「お前が考えて正しいと思うことは父も賛成である、
お前が考えて悪いと思うことは私も反対である」
そう言われると、考えざるをえないのであります。
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著者プロフィール
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ひらさわ・こう──【1900年~1989年】
明治33年新潟県生まれ。脳神経解剖学の世界的権威。幼時より医師を志し、
第四高等学校、京都帝国大学医学部卒業。昭和21年京都帝国大学教授。
32年から京都大学総長を2期6年間務める。38年京都大学総長を退官し
同大学名誉教授。45年勲一等瑞宝章受章。平成元年没。著書に
『生きよう今日も喜んで』(致知出版社刊)などがある。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!