「わし自身が最近、素直になれんのや。平常心を持て
と言いながら心が落ち着かん。人の長所を見よと
言いながら、社員の短所ばかり見てしまう。
君、助けてほしいんや。すまんがな、素直な心に
なるための百カ条、つくってんか」
(上田)
あぁ、創業者が直々に。
(岩井)
そこでまずPHPの所員、さらに松下電器グループ
の社員にも協力を呼び掛け、「どうすれば素直な
心になれるか」という提言募集を行ったんです。
すると約2万件の提言が集まりました。
その中から100カ条を抜き出して、研究員で解説を
つけていくように言われましたが、「君らの文章
は理屈っぽい」と、なかなか気に入って
くださらない(笑)。
いったん保留にしようかとなった時、
1人の研究員が「所長(幸之助氏)、私たちは
とらわれているんじゃないでしょうか。
所長は100カ条をつくれと言われ、我われが
無理に解説をつけようとしている。
いままでは所長の発言からまとめてきたのに、
借り物の言葉から先にまとめようとしていることが
間違いなんじゃないですか」と言ったんです。
幸之助さんは少し考えておられましたが
「君、そう思うか。よし、もう一遍、一からやろう」
と言われてつくったのが、『素直な心になるために』
という本なんです。
(上田)
そんな経緯がありましたか。
(岩井)
私はこの本が「自分が素直になれんのや」という
幸之助さんの葛藤がきっかけで生まれたことが
大事だと思うんです。自分が素直でないと
感じる人こそ素直な人ではないかと。
己の不足を認め、それを埋めていこうという気持ち
を終生持ち続けられたことが素晴らしいと
つくづく感じます。
★本記事は月刊『致知』2013年12月号から
一部抜粋・編集したものです。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!