弊誌で連載中の作家・五木寛之さん。
作家として、人間の生と死を深く
見つめ続けてきた五木さんに、
仏の教えを交えながら、現代を生きるヒント、
この乱世を生き抜く知恵をお話しいただきました。
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〈五木〉
……よくユダヤ人は苦難の歴史を
生きてきた民族だから、子供たちに
乱世になっても価値の落ちない教育をする。
音楽の才能を育てたり、
弁護士や医者にするという話を聞きますね。
けれどそういう肩書とか資格とかいうのは、
本当の乱世にはほとんど意味がないです。
そういう時、最後に頼りになるのは、
裸一貫の自分のこの体なんです。
国が破産しようがどうなろうが、
頼りになるものはそこですし、
価値が変わらないものはやっぱり年相応に
コンディションのいい体を持っていること
ですね。
――健康が一番の資産だと。
〈五木〉
実際、いまは空前の健康ブームといってもいい
くらい、マスコミや書店にはいろんな健康法が
氾濫しているし、そういうものに踊らされて
しまいがちです。
けれども本当は健康法の問題じゃない。
大事なのは養生だと私は思います。
――健康法ではなく、大事なのは養生だと。
〈五木〉
養生というのは、
ただ体を維持するというだけでなく、
生を養うことです。
自分の可能性を十二分に発揮して、
人生をしっかりエンジョイするために、
自分で自分の体をケアすることなんです。
なんとなく古臭いイメージがあるので、
健康法とかアンチエイジングとか
いうことのほうが新鮮に感じるんだろうけど、
私はいま大事なのは養生だと思いますね。
――自らの生を養う。
養生には心を養うという
ニュアンスも感じられて、いい言葉です。
〈五木〉
いまはなんでも専門職に委託する時代で、
ちょっと体の具合が悪いと病院に
行ったりしますでしょう。
早期発見、早期治療は結構なことだけれども、
その前に、自分の健康は自分で
面倒を見る覚悟というものが必要です。
日頃暴飲暴食をしておいて、
自分の体についてなんの信念もなく、
何かあればすぐ医者に頼ろうという考えでは、
絶対うまくいかないと思います。
健康の基本は、自分の体としっかり向き合って、
自分の体が発している身体語、
サインをきちんと読み取ることです。
体は常に主体に向かって信号を発しています。
どうもこの辺りが苦しいとか、
ちょっと無理が続いているとか、体は絶えず
いろんなことを語りかけているものです。
外国語を勉強するのも大事ですが、身体語を読み
取って理解することが一番大事だと思うんです。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!