そうすると、真っ暗な押し入れの中に
一時間くらい放り込まれた後、
再び神仏の前に正座させられ、母が
「心はどこにある」
と聞くんです。
僕は
「……うーん……どっか、このへん」
と自分の胸の辺りを指します。
すると母は、ビシッと、
「どこだか分からないから、自分の心を
示すために言葉と行動があるんだよ!
言葉と行動そのものがあんたの心!!
覚えておきなさい」
と言うんです。
―― 含蓄に富んだ教えです。
だからといって、生涯嘘をつかないで
生きてきたわけじゃないんですが、ただ
やっぱり人が不幸になる嘘ってありますから、
それは小さい頃から言わないようにして
きました。
それから母は苦しい時や悲しい時に、
よく歌を口ずさんでいました。
童謡です。
おそらく僕のDNAに刻み込まれている
メロディーっていうのは、母を通して聴いた
童謡が非常に大きく影響しているんじゃ
ないかなと思います。
――お母様の歌っていた童謡が
長渕さんの音楽家としての原点なのですね。
家の近くにある小高い山の畦道を登っていくと
水源地があって、母は父と喧嘩をしたりすると、
僕を連れてそこに行くんです。
いまでもその情景が目に浮かびますけど、
切り株に腰を下ろして童謡を歌ったり、
自然を眺めたり、つくったおにぎりを食べ
させてくれたり、夕焼け空になるまでじっと
佇んでいる。
父は国家公務員とはいえ、
給料は本当に安かった。
母はそんな中で姉と僕を育てながら
家庭を切り盛りしなければならない。
だから、金銭の苦労、それに伴う父との諍いは
絶えなかったんでしょう。
その時の母の背中とか歌声、
夕焼けの茜色、そういったものが
子供心にも悲しいほど切なく感じられました。
『母2022』 目次
子どもの心の才能を伸ばす「子育ての人間学」
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第一章 子どもの心の才能をいかに伸ばすか
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第二章 こうして我が子を育ててきた
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第三章 子育てに大切なもの
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第四章 生きる力を育む
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その他、コラム等
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致知出版社の人間力メルマガ
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!