スーパーコンピュータ「京」のロゴをはじめと
する印象深い作品群、国内外で展開する
様々なパフォーマンスなど、多彩な活動で
注目を集め続ける書道家・武田双雲さん。
武田さんは、常に自分のエネルギーを綺麗にする、
心を整えることを意識して書に向き合ってきた
そうです。そんな武田さんが実践する
「心のチューニング法」とは。
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〈武田〉
書道は書き手の中だけで完結するものではなく、
見てくださった方から様々な反応を
いただけるところに面白さがあります。
先日開いた個展では、
スイス人の方が私の字に大変感動してくださり、
漢字も知らない外国の方に
いったい何が伝わっているのか、
人が感動するとはどういうことなのか、
深く考えさせられました。
日頃から感じているのは、発表した
作品は、文字の形だけでなく、その奥にある
自分の普段の生活もすべて見られていること。
いくら表面だけ取り繕っても、
嘘は絶対にばれてしまう恐ろしさです。
そのことを踏まえて、
私が筆を執る時に常に心懸けているのは、
エネルギーが綺麗かどうかということ。
邪念がなく、心が整った状態で書くことです。
といっても、イベントなど多くの方の前で
書かせていただく機会も多いため、書く前に
慌てて心を整えるのでは間に合いません。
平素から心を整えておくこと、
チューニングしておくことがとても大事です。
私も人間ですから、ネガティブな
気持ちになることはよくあります。けれども、
その時間が少しでも短くなるよう努めています。
ネガティブな感情は、引きずると
チューニングが難しくなるので、
すぐに応急処置をするよう心懸けているのです。
例えば、自宅で皿を洗おうとした時に、
心が乱れているのを感じたら、いったんスポンジ
を戻して一からやり直す。乱暴にドアを閉めた
ら「すみませんでした」と丁寧に閉め直す。
自分の機嫌がよくないと感じたら、
即座に呼吸を整える、姿勢を整える、
体を動かす、マッサージをする、歌う、
言葉を換える、休憩する、寝るなど、あらゆる
方法を総動員して心のチューニングを図って
います。
いまは多くの人が心のチューニングを
しないまま活動をしているため、
あちこちで不協和音が起き、悩みや問題を
抱えてしまっているように感じます。
私はゲーム感覚で楽しみながら
この心の修行を徹底して重ねるうちに、
日常の当たり前に思われるようなことにも
感謝できるようになり、いまでは周りの人が
戸惑うくらいの「感謝オタク」になりました。
※本記事は月刊『致知』2022年2月号
連載「二十代をどう生きるか」より一部を
抜粋・編集したものです。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!