「グルメのバイブル」として圧倒的な
影響力を誇ってきたミシュランガイド。
しかし、その権威は「食の国際化」
の中で揺らぎ始めている。
近年、アメリカ、日本、香港とガイド
発行国を増やしてきたのはなぜか。
その背景には、どのような
経営戦略があるのか。
トヨタ自動車とも比せられる「偉大なる
地方企業」の内幕を、関係者への徹底
取材で詳細に描き出す。
選ばれる側の一喜一憂ぶりに比べ、
選ぶ側は至って無口である。
発表といっても、ミシュランが
記者会見を開くわけではない。
三ツ星、二つ星、一つ星に格付けされた
レストランの一覧表がその日の朝早く、
メールに添付される形で記者の
手元に届くだけである。
新たに星を授ける理由も、星を奪う
根拠も、一言も記されていない。
この寡黙さこそが、ミシュランの権力
の源泉だといえるだろう。
自ら説明も弁明もしないだけに、
外部があれこれ憶測を働かせる。
ミシュランガイドは1900年に、ドライバー
のための無料冊子として発刊された。
現在のガイドより一回り小さい手帳サイズ
で、自動車メーカーの宣伝、ミシュラン
営業所の一覧、自転車のタイヤ交換
方法の解説などの後、フランスの
都市をアルファベット順になら
べ、それぞれの街の概要と
そこにある自動車用の設備を紹介している。
少し意地悪な言い方をすると、ミシュラン
ガイドはすでにあった「ツーリング・クラ
ブ・ド・フランス」年報をパクったのだ。
しかし、ミシュランの本領は、ガイドを
生み出したアイデアよりも、むしろその
後の努力によって達成した洗練度に
あったといえるだろう。
ミシュランは本社を地方都市
に置く企業である。
しかも、第二の都市マルセイユでも、
第三の都市リヨンでもなく、外国人
に極めてなじみの薄いクレルモン
フェランだ。
クレルモンフェランにとどまる利点を
共同社主のロリエはこう強調する。
「本社が地方にあることは、『凝縮力』と
でも呼ぶべきものを生み出す。
外国人社員の場合、パリだとフランス語を
喋らなくても生活できるが、クレルモン
フェランだとパンを買うのも苦労する。
そのような街に来て何年か働くことは、
明らかに企業としての結束を強める」
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!