翻訳家の松岡和子さんは28年をかけて
シェイクスピアの戯曲37作品を翻訳されました。
演出家の蜷川幸雄さんは
シェイクスピアの全作品を上演するに当たって、
すべて松岡さんの翻訳を用いられました。
若い頃、シェイクスピアのあまりの大きさに圧倒
され長い間、作品から遠ざかっていた松岡さん。
翻訳を手掛けるようになったのは「運命だった」
と語ります。
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(松岡)
(──『シェイクスピア全集』(ちくま文庫)
33巻37作品をこのほど完結されました。
28年にわたる努力の結実ですね。)
(松岡)
ありがとうございます。
忘れもしませんが、昨年12月18日、
37本目の『終わりよければすべてよし』の
最後の1行を訳し終えた時、
本当にホッとして
「ああ、これで大きな役目を果たせたな」
という思いが込み上げてきました。
シェイクスピアの翻訳のお話を最初にいただい
たのは1993年です。『間違いの喜劇』という
作品でしたけど、まさかその後、自分が全作品を
翻訳することになるなど思ってもみませんでした。
私は長い間、シェイクスピアのあまりの大きさに
圧倒され、ずっと逃げてばかりいましたから
(笑)。
(──全集を手掛けるきっかけがあったのですか。)
(松岡)
演出家の蜷川幸雄さんが、1998年からさいたま
芸術劇場で全作品を上演することになって、
「日本語でやる場合には、松岡訳を使うから」
と言ってくださったんです。
それと時を同じくして筑摩書房からも、文庫の
かたちで全集を出したいというお話をいただき
ました。54歳の時です。
ただ、私の場合は出版はあくまでも上演に合わ
せてと考えていましたので、訳すのは蜷川さん
がお決めになった上演作品順でした。
稽古にも頻繁に足を運び、上演が続いている間は
死ねないという思いでやってきたんですけど、
蜷川さんが5本を残して先に逝ってしまわれた
のはとても残念です。
ですから、この28年間は、
最初から遠いゴールが見えていたというよりも、
蜷川さんに促されるようにして一作一作を訳して
いき、振り返ったら訳した作品が
ずらっと並んでいたという感覚なんです。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!