東日本大震災から丸5年。特に甚大な被害を
受けた地域の一つ、宮城県気仙沼市で
いまも懸命に事業を営む
二人の経営者の志に胸打たれます。
────────[今日の注目の人]───
★ 人の心に明かりを灯す ★
熊谷 光良(熊谷電気社長)
×
菅原 昭彦(男山本店社長)
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【熊谷】
実は、震災翌日にある夢を見たんですよ。
その日は父の家に移って、岩手県まで食料の
買い出しに行っていたので、疲れて
夜早く寝ました。
ところが、夢を見て夜中に目が覚めたんですね。
ちょうど震災の2年前にある方に言われた
言葉があって、それまでずっと忘れていたんです
けど、その言葉が夢に出てきたんです。
「震災があると停電が長く続く。
でも町に明かりを灯さないと
人の心にも明かりが灯らない。
熊谷君、あんた電気工事屋だろう。
何かあったら君の出番だからね」
【菅原】
胸に沁みる言葉ですね。
【熊谷】
その声が聞こえてきた時に、こんなこと
していられないと思って、まだ暗いうちに
知り合いの自転車屋さんを叩き起こして、
「自転車一台寄こせ」と(笑)。
それで町中を駆け回ったら、とにかく
送電線が倒れている。
その後、市役所の災害対策本部に行って、
「大型発電機を全部押さえてほしい。
それと全国ネットのリース屋さんに掛け合って、
とにかく発電機を集められるだけ集めて、
まず病院や火葬場などに貸し出すように。
そうしたら後は電気工事組合で何とか
配線するから」と伝えました。
うちの社員も数名出てきてくれたので、
いろんなところへ行って最低限の電気を
生かしていったんですね。
毎日、食べ物もろくに食べられない、
家族の安否も分からない。
そういう中で社員は仕事をしていますから、
ほとほと疲れているわけですよ。
ところが、ある日私が家に帰ってきたら、
駐車場から社員の笑い声が聞こえてきました。
どうしたんだろうと思っていたら、社員が
こう言うんですよ。
「きょう病院に行って、電気を生かしてきました。
そうしたら、入院しているおじいちゃん、
おばあちゃんが手を合わせて、
『あんたたちは神様見てえな人たちだ』
って言ったんです」と。
社員が自分たちの仕事に誇りと使命感を持って、
獅子奮迅の働きをしてくれていると思うと、
込み上げてくるものがありましたね。
【菅原】
感動的なお話です。熊谷社長のようにライフライン
に関わる会社だったら……
※地域を復興させることが何よりの恩返しと語る
お二人の奮闘記の続きは、本誌でご覧ください。
『致知』2016年6月号
特集「関を越える」P18
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!