著者はそのカギを握る「数学脳」が、生まれながら
の能力なのか、それとも学習で身につくものなのか
という素朴な疑問を解き明かしている。
特に、数の多い少ないを判断する「数のモジュール」
は生まれつきすべての人に備わっているという仮説
から、教育を受けていない先史時代の人間や乳児
が数をどう認識するかや、すべての人の脳に
「数のモジュール」が存在するのか、するとしたら
数学の得手不得手はなぜ生まれるのか、と
いった疑問を次々と検証する。
その過程は実に興味深い。
たとえば、論理や分析などを行うとされる左脳
を損傷した人は数をどう扱うのか、逆に右脳を
損傷した人の場合はどうなるのかを、実際に
脳に障害をもつ人の実験から探り、数を
扱う脳の部位を割り出している。
さらに、その部位が指の動きと連動している
こと、それが発達していても結局は意識的な
学習訓練が必要なことなどを明らかにしている。
数学は努力か才能かという、よく俎上にのぼる
疑問が、ここでついに解き明かされたと言える。
最近では数学の必要性が声高に叫ばれ、楽しく
学べる一般向けの数学本が多数出版されている。
そのなかで本書は、数学と人間の奥深い世界の
謎を解いた読み物として際立っている。(棚上 勉)
「数学脳」がよく働く人は、1つの問題を2つ
以上の方法で解くことができ、たとえば
99×14は(100-1)×14と同じだと
考え、また(100×14)-(1×14)
に変形して楽に解くことができる、
という本書の指摘がおもしろい。
数学における習熟と卓越が、最後にはその
国の繁栄を決する。(ナポレオン)
学校で教える科目のなかで、数学ほど国の
将来に重要なものはない。
また近年、数学ほど盛んに論評され、批判されて
きた科目もない。(キース・ジョゼフ)
数学の教え方としては、簡単な概念から出発し、
その上に高度なものを積み上げて
いく以外に方法はない。
計算、ひいては数学の面白さは、種々雑多な
事実、手順、考え方の関係を見つける
ことにある。
偉大な数学者たちの仕事は、それに尽きると
言ってもいい。
知識と手順、理解。
これが数学を支える三本柱だ。
数学は三本の柱で支えられている。
最初の2つは、学校や家庭、あるいはそれ以外
の場所で身につける数の知識とその手順。
それは先祖代々受け継がれてきた
知的財産でもある。
そしてこの二本の柱を正しく結びつけるのが、
理解なのである。
数学を面白くするには、遊びの精神を取り入れる
のが最善の方法だと私は思っている。
夢中になれるゲーム、パズル、手品、ジョーク、
奇妙な話、モデル、遊び言葉などなど、退屈な
教師が軽蔑しそうなことを披露すれば、寝て
いた生徒たちもたちまち目を覚ますだろう。
数学恐怖症を克服する3段階。
1.急がないこと。
2.むやみに新しいことを覚えようとしないで、
いま知っていることを正しく理解する。
3.ひっくり返してみる。
同じ問題を何度もやる必要はない。
反復練習は、理解の助けにならない。
それよりもひとつの問題を違う角度
から眺めてみよう。
藤井留美
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今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!