軍は.平和を維持するために利用するもの 第 2,333 号

今年1年の世界を振り返る時、8月15日、
アフガニスタンの首都カブールが、イスラム
原理主義勢力・タリバンに制圧されたことは
衝撃的な出来事として人々の記憶に焼きついて
います。


この時、現地の日本人を救出するための日本政府
の対応は後手に回り、大きな批判を浴びました。
なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。
元空将の織田邦男氏に登場いただいた『致知』
12月号の連載「意見・判断」の一部を紹介します。

───────────────────

(織田)

いまの日本は危機に的確に対応できる体制に
なっていない。戦争といえば、宣戦布告をして
華々しく戦闘が始まるイメージがあるが、
世界はいま、平時と有事の区別がつきにくい
グレーゾーンの戦いに入っている。

7年前、クリミア半島がロシアに侵略された
時は、現地の人が朝起きるとインターネットも
テレビも通じなくなっており、政治経済の中枢や
メディアなどの施設は、国籍の分からない軍

(後でロシア軍と判明)に占拠されていたという。

ロシアが戦いの参考にしているのは、中国の
掲げる「超限戦(ちょうげんせん)」だろう。
超限戦というのは、軍事力だけでなく、外交、
経済、心理、世論なども含めたあらゆる非軍事的
手段を駆使して戦いを仕掛けるのである。

その中国は、日本の尖閣諸島にグレーゾーンの
戦いを仕掛けてきている。彼らは今年、海警局
の船が武力行使を可能にする海警法を改正した。
つまり、軍を出さずに日本の領土を奪える体制を
着々と整えているのである。

ところが日本では、グレーゾーンの戦いに
どう対応するかという議論すら起こらない。
国民の皆様にはよく認識しておいてほしいこと
だが、いまの日本の法律の下では、自衛隊は
防衛出動が下令されない限り警察権しか行使
できず、軍としての自衛権行使ができない。

いざ事が起こってから、
国会で防衛出動の可否を議論しているようでは
とても国を守れない。
平時か、有事か判断し難い状況下で、
自衛隊が速やかに対応できるよう、
早急に法律を見直す必要がある。

日本は先般、有事法制や安全保障法制を実現し、
一部限定的な集団安全保障体制を整えたが、
これはようやく冷戦時の戦いに対応できる体制
が整ったに過ぎない。世界の現状に対して、
日本は周回遅れの位置にいることを自覚しな
ければならない。


国民に求められるのは、軍事に対する理解で
ある。いまの日本では大学で軍事を教える
ことがタブーになっている。

私の後輩は現在某国立大学で教鞭をとって
いるが、着任の際に軍事研究をしないことを
約束させられたという。

日本には軍事に対するアレルギーがある。
しかし、軍事を知らずに国の安全を守る
ことはできない。


軍は、平和を維持するために利用するもの
という発想に切り替えてほしい。
平和は与えられるものではなく、勝ち取る
ものである。このことを心に刻み、日本の
防衛体制が早急に再構築されることを
願って止まない。


(本記事は月刊『致知』2021年12月号
連載「意見・判断」から
記事の一部を抜粋・編集したものです)


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 今回も最後までお読みくださり、

     ありがとうございました。感謝!

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