東洋思想に基づくリーダーシップ論の第一人者
であり、多くの経営者が教えを請う田口佳史さん。
イメージトレーニング研究・指導のパイオニア
であり、数々のアスリートや経営者の能力開発
に新たな光を当ててきた西田文郎さん。
それぞれ独自に道を究めてきた二人は共に、
かの〝経営の神様〟松下幸之助に「運と徳」
を高めるヒントを学んだと語ります――。
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〈田口〉
今回の運と徳というテーマに関して、私に教え
を授けてくれたのが松下幸之助なんです。
ある時、PHP研究所の岩井虔(いわい・けん)さん
から、「商道コースという研修の講師になりま
せんか」と言っていただいたんですね。ちょうど
仕事があまり来ない苦難の最中だったので、
すぐに飛びついた。
それで打ち合わせの時に、「ところで、前の講師
はどなたですか」と聞いたら、「松下幸之助です」
と。それは荷が重いなと思って一瞬怯んだんです
けど、「次は20代か30代の若い人に」という
松下幸之助の強い意向があったらしいんです。
そういうご縁があって、35歳で初めて経営の
神様にお目にかかった時に、「経営者の条件
とは何ですか」って聞いたら、真っ先に
「運が強いことや」と。矢継ぎ早に、「運を
強くするにはどうしたらいいですか」と聞いた
わけです。そうしたら、「徳を積むことしかない」
と。これが運と徳の関係に触れた最初でした。
〈西田〉
松下幸之助の薫陶を受けられたこと自体が、
田口先生の運の強さの表れですよ。
〈田口〉
また、徳についてはこうもおっしゃって
いましたね。
「徳というのはAさんに掛けて、Aさんから
返ってきたことは一回もない。
だからと言って、Aさんに徳を掛けなくて
いいかというとそうではない。
どこから返ってくるか分からないから、会う人
それぞれに徳を掛けなきゃいけない」。
じゃあ徳って何かということですが、
私なりに東洋思想を学んで規定したのは、
自己の最善を他者に尽くし切ることです。
※本記事は月刊『致知』2019年4月号 特集
「運と徳」から一部抜粋・編集したものです
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!