八木重吉の詩には、人の心を癒やし励ます力が
あると文学博士の鈴木秀子先生は語られます。
今回は『致知』好評連載「人生を照らす言葉」
の中から、鈴木先生が八木重吉の詩を解説
されるくだりを紹介します。
───────────────────
(鈴木)
最近、致知出版社に寄せられた
女性読者の声を拝見する機会がありました。
その方は目がご不自由になり、
お知り合いの方に毎号、『致知』を
読んでいただいているとのことです。
ありがたいことに私のこの連載も楽しみに
されていると知りました。その方に何が
プレゼントできるだろうかと考えた時、
やはり短くて覚えやすく、しかも心に響く
八木重吉の言葉はピッタリではないかと
考えました。
最初に紹介するのは「不思議」という短い
詩です。
不思議
こころが美しくなると
そこいらが
明るく かるげになってくる
どんな不思議が うまれても
おどろかないと おもえてくる
はやく
不思議がうまれればいいなあとおもえてくる
ある知り合いの女性が最近、引っ越しをしたと
いうので、友人と一緒に訪問しました。
新居に出迎えてくれた彼女は「片づけるのが
大変でしたが、こうして座っていると、
周囲は緑に覆われていて雑音は聞こえないし、
とても落ち着くんですよ」と話していました。
実際、とても落ち着いた雰囲気のご自宅でした。
「本当に静かですね」と言ったまま、
しばらくの間、三人が座っている
その空間を沈黙が支配しました。
ふと気がつくと、一緒に来た友人の顔が
みるみる美しくなっていくではありませんか。
「あら、あなたの顔、どんどん綺麗になって
いますよ」と話し掛けると、家主の女性が
「私もこの部屋の気がとてもよくなり、
澄んでくるのを感じます」
と言葉を添えました。
何かを話すわけではなく、ただ一緒にいる
だけで、皆の心が雑念もなく落ち着いている。
しかも、そこに満ち溢れる
静かで清らかな気が人の心ばかりか
表情にまで影響を与えている。
その安定した静かな喜びこそが不思議と
いうものかもしれない。また、そこから
いろいろな働きが生まれるのかも
しれないと、私は重吉の詩を思い浮かべながら、
しばし至福のひと時を味わっていました。
致知出版社の人間力メルマガ
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!