よき言葉、よき教えに触れることがよき心を
つくる――これは先人たちが共通して説く
不変の真実です。
本日は、コロナ禍により不安が広がり、人との
繋がりが薄れている中で、心にあたたかい灯が
ともる、美しい詩をお贈りします。
認知症の母の壮絶な介護に24年間向き合った
詩人・藤川幸之助さんの詩「待つ」です。
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詩:「待つ」
タンポポを空に舞い上がらせたいと
黄色いタンポポを吹いている幼い私に
「ゆっくりと待てる人だけ
白いタンポポに出会えるのよ」
と、母が言ったことを覚えている
だから、私は待った
その母が認知症になった時も
母の食事が終わるのを
口から出てくる母の言葉を
私の言葉が母に届くのを
母がこの世界を理解する時間を
何かができるまでの母の時間を
苛立ち「なんで?どうして?」と
繰り返しながらも私は待った
そして、白髪で真っ白にふくれあがり
一吹きすればすぐにでも
あの世へ飛び立たんばかりの
老いた母タンポポの綿毛にたどり着いた
せっかくこんなに立派な白いタンポポを
目の前にしているというのに
吹くこともできず
飛んでいってはいけないと
息をすることさえできないで
怯えながらまだまだ私は待っている
母タンポポの綿毛が風に揺れる
一つ二つ風に乗って舞い上がり
私の命にやさしく降り立つ
その種が芽吹き
私の命の中で深く深く根を張り
私の命になっていくのを
ゆっくりと私は待ちながら
静かに母の命をつないでいく
私はまだまだ待っている
・・・・・・
●詩「待つ」を収録、涙なしには読めない
藤川氏の詩集『支える側が支えられ、生か
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!