人間社会のさまざまな事象を読み解いてきた
脳科学者・中野信子が次に選んだテーマ。そ
れはヘヴィメタルです。重く激しいサウン
ドとダークな世界観で熱狂的なファンを
生む一方、その音楽性やスタイルゆえ
に世間から疎まれがちなヘヴィメタル。
しかし様々な研究によって、このサウンド
が持つ効能やファンの特性が明らかになっ
た結果、世界中の科学者からポジティブ
な評価を得るに至っています。「ヘヴ
ィメタル」その特徴を本誌解釈で端
的に表すと「天才が好み、天才を
育む音楽」であるということ。
良識的な人々が眉をひそめるヘヴィメタル
には、認知機能や知的好奇心、ストレス耐
性の向上など、知育に欠かせない数々の
効果が認められるのです。
あまり知られてはいませんが、メタルは
ジャンルがかなり細分化された音楽で、
比較的ハードロックに近いものから、
ウルトラヘヴィでブルータルを
極めたようなメタルまでいく
つもの流派があります。
そんな貧弱な音楽経験のなかでも、メタルを
聴いているときだけは、自分の孤独感が癒
されていくような感じを得られました。
「別に孤立していても構わないのだ」
メタルは、そんな安心感をいつもわたし
に与えてくれたのです。
メタルには叫ぶような調子の音やノイジーな
音もたくさん盛り込まれている反面、音楽の
構造や輪郭自体はとてもはっきりしていて、
音の重なりもとても緻密に計算され、図
太いリズムもしっかりと刻まれている。
音楽に対して「色がついている」というのは、
少し変わった表現に聞こえるかもしれません。
脳科学者として自己分析すると、これは
「共感覚」のひとつだった気もします。
「共感覚」とは一部の人に見られる特殊な
感覚で、ある刺激に対して通常の感覚
だけでなく、ちがう種類の感覚も
生じさせる現象のこと。
あるいは、自分にとってあまりに印象的で、
まるで世界が広がるような感じがしたのを
単に「色がついている」と表現しただけ
なのかもしれません。さらに言えば、
その両方が相まった可能性もあります。
いずれにせよ、音楽に対して、はじめて
「色」というものを感じた体験でした。
この経験はほかのジャンルの音楽を聴く人、
たとえばジャズなどを聴く人にも共通
するものかもしれません。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!