脳神経解剖学の世界的権威であり、
第16代京都大学総長を務められた平澤興先生。
「人間には無限の可能性がある」
「人間には140億個の神経細胞があるが、
それを全部使い切ったものは一人もいない」
人間に秘められた大いなる力と可能性を
生涯にわたり探究し続けた哲人の言葉は、
今日を生きる私たちにもなお力を与え、
明日への活力を湧きたせてくれます。
その教えを紐解くのに最適なのが、
『平澤興講話選集「生きる力」』(全5巻)です。
平澤先生の人柄を思わせる親しみやすい言葉で、
先生自身がいかに学び、いかに生きてきたかを
語りつつ、いまここに命のあること不思議さ、
有り難さにまで話は及んでいきます。
さて、本書には一体どのようなお話が
収録されているのでしょうか。
本日は、第3巻に収録されている
「顔は心の窓」という講話の一部を
お届けします。
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「顔は心の窓」
――顔を見ればその人がわかる
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いつも申します通り、身体の中で
はだかになっておるのは顔だけであります。
化粧をしましても、塗るだけでありますから、
それは目の慣れない人から見れば
ひととおり綺麗でありますが、
化粧の美は本当の美ではありません。
慣れた目から見ますというと、
化粧も遠くに飾っておれば結構ですけれど、
話をして、一度か二度笑わせてみれば、
その人のもとの顔が出るのであります。
ごまかすことはできません。
一度笑わせたあとに、一番もとの顔になります。
鬼のような顔は上手に笑っても、
きれいな顔が笑っても、笑ったあとの瞬間の
表情を、顔を見れば瞬間であります。
もとの顔であります。これはおそろしいもので
あります。ですから私、いつも申します通り、
ごく大事な人事には書いた履歴書はとりません。
人からも聞きません。
人から聞いても、その人の言うことはあてに
なりません。書いたものもあてになりません。
なぜなら、昔はちょっと面白くなくて罪を受けた、
罰を受けたという人でも、それを通り越して、
乗り越えて、さらに立派な人になっておるんなら、
昔のことを責めることはないと思うのであります。
私はそう思います。
むしろ昔間違いをおかして
今日は普通の人より偉くなっておるという、
その人の努力はたいしたもんであります。
私は大学におります時も、
重要な人事は決して人に聞きません。
人に聞きますというと、
本当にいい人が悪口を言われる場合があります。
書いたものを見ても、
なんだか途中に妙なところがあります。
そんなものに気をとられますと、
適切な人事はできません。
まず、真っ先に会う。
会ってしばらく話をしておりますと、
これはもう、誰がどう言っても確かであります。
まあ決してということが言えるかどうか、
私の経験の範囲内では、私は幸い
「決して」という思い間違いを
したことはありませんでした。
これはいい人だと思ったのに、
あとから「なんと」ということは、
一度もありません。
しかしまあ、私は幸運であったと思います。
だから、決してとはよう言いませんけれども、
まず間違いはないのであります。
顔ははだかであります。
顔は心の窓であります。
心がちゃんと顔に出ておりますから、
自信とかそんなものとは違います。
永久保存版。珠玉の人間講話集
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!