現行の小学校の国語教科書を見渡してみると、
絵や写真が多すぎて活字が足りません。
載っている文章も、とくに古典などの
硬い読み物が足りません。
全体として、知性の精度が
もっと高くてもいいのではないかと感じます。
決して現在の教科書の内容が悪いわけでは
ありません。
多くの教科書には、それぞれの
文章に対して課題があり、その課題を
こなすための文章が掲載されています。
これはこれで理由があって、
学習指導要領に沿って授業をしていく際に
やりやすいという側面があります。
しかし、一方で私たちは子どもの力を信じて、
最高の知性による最高の日本語を
子どもたちに直接届ける必要があります。
その最高の日本語を子どもたちが読んだときに
何を考えればいいのかについて、
この教科書ではポイントという形で解説を
しています。
それを参考にしながら、ぜひ親子で
「こんなふうに読めばいいんだな」
「ここがポイントなんだな」
と話していただきたいと思います。
これからの学習指導要領による教育の方向性
は、「主体的で対話的な深い学び」です。
主体的というのは、自分から進んで
勉強・研究することです。
それに加えて、他人と対話をしながら自分の
理解を深めていくことが求められています。
そう考えると、本書に掲載した文章は
どれもすばらしい深みを持ったものばかりです。
その読解を通して、自然と深い思考に導かれて
いきます。
読むことがすなわち考えることになるような
高いレベルの文章を集めていますから、
子どもたちだけでは
完全に理解できないかもしれません。
しかし、親が一緒に読めば、子どもと話ができ
ます。話をすれば、「ああ、ここはこうだったん
だね」「ここはこういう深い意味があるんだね」
といった発見が必ずあります。
そんな気づきや発見が、
まさに知性のきらめきなのです。
ソクラテスは
「驚きこそが知を愛することの始まりだ」
と言っています。
驚きとは哲学の始まりなのです。
ぜひ本書に掲載されている文章を読んで、
子どもたちに「へえ、すごいね」と
感じてほしいと思います。
私自身、ここに掲載した文章を初めて読んだ
とき、「へえ、こんな面白い文章があるんだ」
「こんなことを考える人がいるんだ」
「昔の人だけど自分の考えとすごく似ている」
といったいろいろな驚きを感じました。
気づきや感動といった心を動かすものと
出会うことが感性を育て、
そして知性を育てていきます。
感性は非常に大切です。
感性があってはじめて価値判断ができ、
知性が磨かれていくからです。
よく早期教育といいますが、
私はまず感情の教育というものが
大変大切だと考えています。
何を美しいと思うのか、何をいいと思うのか、
そういう価値の教育が重要です。
頭だけよくなっても、何が大事なのかが
わからない、判断できないというのでは、
本当に頭がいいとはいえません。
「思考力・判断力・表現力」の三つが、
新しい学習指導要領では、重視されています。
この三つの力にあふれた文章と、
この本で出会ってほしいです。
齋藤孝
致知出版社の人間力メルマガ
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!