創業期をいかに乗り越えるか。
それは逆境に立たされた時にどう生きれば
よいか、にも通ずる生きた教えに
なってくれます。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんが
自らの体験から掴まれた「確信」に
ぜひ触れてみてください。
────────『今日の注目の人』──
◆ 誠意を尽くしたと言えるか ◆
鍵山 秀三郎(日本を美しくする会相談役)
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一所懸命、一心不乱──
創業時の私は、ただただ夢中でした。
人が10時間働けば、私は14時間、16時間
働きました。24時間寝ずに働くことも
よくありました。
当時は会社の車に乗り、しばしば遠方まで
仕事に出向いていましたが、旅館に泊まる
時間もお金もなく、いつも夜を徹して
走り続けるか、車中で夜を明かしていました。
いまのようにエアコンのない時代です。
夏は窓を閉めて寝ると蒸し風呂のように暑く、
開ければ体中蚊に刺されたものです。
冬は骨が凍るくらいまで冷え込み、目が覚め
て体を起こすとポキンと折れるのでは
ないかと思うくらいでした。
そうした中で、先方が何を望まれているのか
を必死で探り、それに懸命にお応えして
信頼を積み重ねてまいりました。
自分の体力、心を尽くせるだけ尽くして、
なんとか毎日を乗り越えていた私には、
もっと上手くやってやろうとか、も
っと楽な方法はないか、などと考
える余地はまったくありませんでした。
よく“あの手、この手”といいますが、
人間には二本しか手はありません。
与えられた条件を生かしてやって
いくしかないのです。
そうして至誠を尽くしていけば、必ず
見えなかったものが見えてきます。
どっちが東か西かも分からないような真っ
暗闇の中でも、いつか薄明かりが
見えてくるものなのです。
これは私の体験から確信を持って言えます。
もし何も見えてこないとしたら、まだまだ
誠意の尽くし方が足りないと
考えるべきです。
自分はこんなにやっているのに、などと
思っているうちはまだ駄目なのです。
この厳しい競争の時代に、そんな精神主義は
通らないと考える人も多いことでしょう。
しかし、昔から競争のない時代はありません。
実際に私自身も、大変な競争の中を
歩んでまいりました。
他社が目にも留めないわずかな隙間に目を向け、
それが少しでも広がるように努力を重ね、
道をひらいてきたのです。
月刊誌『致知』『致知』2008年8月号
連載「巻頭の言葉」
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。 感謝!