「高血圧になる」「胃の粘膜が荒れてがん
になりやすい」このような情報が溢れ、塩
は体に悪いというのが、いまや日本人
の常識になっています。
しかし、本当にそうでしょうか?
実際、1988年に実施された国際的な調査
研究では、食塩の摂取量と血圧との相関
関係は導き出せませんでした。
食用塩研究の第一人者である寺田牧人さん
が語る「塩は健康の天敵というウソ」とは――。
┌───────今日の注目の人─────────┐
「昔ながらの伝統海塩で元気を取り戻す」
寺田牧人(NPO法人日本食用塩研究会)
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塩と聞いてたいていの人が思い浮かべるのは、
イオン交換式という化学工業的な製塩法で
つくられた純度の高い塩化ナトリウム
のことだと思います。
しかし私がここで人体に不可欠な塩と主張
しているのは、日本で有史以来つくられて
いた伝統海塩のことです。
伝統海塩は、海水を天日で濃縮し、平釜
で結晶させてつくられた塩で、ナトリウ
ムばかりでなく、カルシウム、マグネ
シウム、カリウムなどのミネラルを
バランスよく含んでいます。
そしてそのバランスは、人間の血液の
ミネラルバランスに近いのです。
海は地球の生命の源です。
人間は遙か昔、太古の海で発生した単細胞
生物から進化を繰り返して誕生しました。
その体内を流れる血液やリンパ液など体液
の成分は、太古の海の成分と同じであり、
海水を構成する水と塩は、私たちの
生命に不可欠な母なる海のエキスなのです。
しかしながら、現在主に流通しているイオン
交換式の製塩法でつくられた塩は、「塩とは
塩化ナトリウムである」という定義のもと
に、他のミネラル分が削ぎ落とされて
おり、母なる海のミネラルバランス
を保持した伝統海塩とは似て非なるものなのです。
昭和46年、法律によって、日本で伝統的に
行われてきた塩田式の製塩法が廃止され、
全面的に化学工業的なイオン交換式の
製塩法に切り替えられました。
これは経済成長を背景に、主に瀬戸内海に
広がっていた塩田を臨海工業地帯に転換
するとともに、天候に左右される農耕
的な製塩業を、屋内で省スペースで
展開できる近代産業に進化させて
いこうとする配慮があったのです。
しかしながら、伝統海塩を摂取することの
重要性を知る私たち消費者グループの有志
や、心ある学者の方々によって自然塩
復活運動が始まり、平成9年に塩
専売制度が廃止されると、市場
にかつての伝統海塩も出回る
ようになりました。
塩化ナトリウム純度が低く、ミネラルバランス
のよい昔ながらの伝統海塩は、高血圧症の
原因になったりはしません。
「塩を摂り過ぎると高血圧になる」という
のは、正確には、「高純度塩=塩化ナトリ
ウムを偏って摂り過ぎると高血圧症に
なる可能性がある」ということです。
つまり、塩化ナトリウムのアンバランス
な過剰摂取こそが問題だったのです。
大切なのは、他のミネラルとのバランスで
あり、特にナトリウム、カリウム、カルシ
ウム、マグネシウムのバランスが重要です。
塩の害をいうなら、塩化ナトリウムの単独
過剰摂取こそ問題にすべきなのです。
これから購入する塩が、ミネラルバランス
の整った伝統海塩か否かを判断するには・・・
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その見極めの方法とは?さらに、理想の健康
状態を保つ「伝統食育の食生活指針」とは――。
『致知』2014年11月号
連載「大自然と体心」 P130~P132
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!