弱いウサギは長い耳を持て。インテリ
ジェンスとは、安全保障に関する意
思決定に資するものである。
したがって、それなくしては自国の安全
保障政策を自分で決められない。
だから独立主権国家には情報機関が
必須なのである。
弱いウサギは長い耳を持つ。そしていち早く
危険を察知して、逃げ出す足を持っている。
危機に打ち勝たなくてもよい。
危機を避けることも重要な
危機対処法の一つなのだ。
日本版NSCと秘密保護法、そこまでは
できた。とはいえ、独立主権国家として
要求される、「インテリジェンス」
の水準にはほど遠い。
強力なインテリジェンス機関、
情報機関をもたないからだ。
人材育成は一朝一夕にはできない。
情報収集は、コンピュータで検索したり、
解析して調べたりすればわかると
いうわけではない。
やはり基本となるのはヒューミントで
あり、その重要性は比較にならない。
緊急事態に対処するのは、何といっても
人間の知恵と、相互の信頼関係である。
外国の情報機関と個人的な付き合いが
あれば、「公式には手に入らないはず
の情報」が手に入るし、「入れない
のが建前の場所」にも立ち入る
ことができるのだ。
そのためには各国の情報機関、すなわち
CIA,M16、あるいはモサドといった
連中と日常的に付き合って、情報機関
や治安機構の本部に入っていける
要員が必須になる。
かつてそれを引き受けてきたのが私だった。
「おい、ちょっと行ってくれ」という後藤
田命令ひとつで、不可能とも思える任務を
いくつも完遂できたのは、私がインテリ
ジェンスの世界にいたからだ。
情報官として、各国の情報機関の人間と
付き合っていたからに他ならない。
外事警察から国際インテリジェンス・
オフィサーの道を歩んだ私だが、ど
うにか情報の世界で一目おかれる
ようになるまで、30年ほどかかっている。
人材育成は一朝一夕にはできない。
個人的なネットワークを築くまでには、
長い時間がかかるのである。
平時から「裏」の世界と「表」の世界の
境界線に関する知識や人脈がないと、20
20年の東京オリンピックも控え、増加
が予想される国際テロをはじめ、国
家レベルの事件、事案に手も足も
出ないことになる。
国際的な緊急事態に備えて情報を収集、
分析し、事件勃発となれば十分に目や
耳の役割を果たすだけでなく、交渉
や抗議ができる口や手足を備えた
組織は、日本にもあってしかるべきである。
諜報活動、とくにヒューミントは、人間の
機微に通じいることが絶対の要件である。
現場要員にも上司にも、さまざまな経験
を積んで精神的に成長していること
が求められる。
ことに上司には「清濁併せ呑む度量」が必須だ。
敵を出し抜くためには、状況を判断しながら
臨機応変に指示を出せる能力も必要だ。
その上で、百戦錬磨でなくてはいけない。
国際紛争を解決する手段として軍事力
を放棄した日本としては、インテリ
ジェンスが頼りのはずだ。
独立主権国家にはインテリジェンス機関、
国家中央情報局の創設が必須なのだ。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。 感謝!