人生の真の意義をつかんだ人はどれほど幸福か知れぬ (3-2) 第 258 号

 日本のマスコミは、課題が多い。

 そこには、イギリスのBBC放送のように、

世界的な視野を持ったニュースキャスターに

よる落ち着いた内容や分析は存在しない。

 日本の報道は、日本国民のみが見ているの

ではなく、世界の人々も見たり読んだり

して日本を評価しているのである。

 私は、歴史博物館のようなロンドンの街並みを

眺めるたびに、何世紀ものあいだ変わらずに

ある、冷厳な質感のある街並みに鳥肌

の立つような魔性を感じる。

 イギリスの強さは、公式、非公式の国際会議を

いつでも開いている魔性を秘めた、このロンドン

の街そのものにあるのではないかとさえ思う。

 このロンドンで行われている非公式の国際会議

こそが、外交の前哨戦なのである。

 東條は国家の命運を背負い、3度の戦いをしている。

 最初の戦いは、「戦争は外交の延長」といわれるように、

和平のための日米交渉という外交の戦いである。

 次は、大東亜戦争。最後に、東京裁判での戦いである。

 アメリカから武器や資金の援助を受ける蒋介石、

中国におけるコミンテルンも、日米交渉の成立は

断固反対であり日米開戦を望んでいた。

 すぐれた諜報組織を持つイギリスのチャーチルは、

日本が開戦に踏み切ることを事前に知っていた。

チャーチルは情報官が手を加えた諜報情報ではなく、

側近のデズモンド・モートン少佐が選んだ、

重要文書を原文のまま読んでいた。

 特攻隊戦隊長の村岡英夫少佐は、次のように

記している。

「戦中、戦後にかけて、特攻隊員へのいささか

あやまった観察は多い。

 特攻隊員とても、すべて生身の人間であり、

悟りの境地にたったような透徹した死生観は、

持ちあわせていなかった。

死を恐れないなどという者もいなかった。

ただ、あったものは、祖国が未曾有の危機に

直面している現実と、われわれ若者が、この

祖国と民族の危難を救わなければならない

という義務感であったろう」

 敗れはしたものの、日本はよく戦ったのである。

 この敗戦の教訓は、本来であれば正当に

評価されるべきであろう。

 米英中ソという大国を敵にして3年8ヶ月もの

あいだ戦い、そして、ドイツのような「無条件

降伏」ではなく、ポツダム宣言による「条件

降伏」で戦争を終えるのである。

 古典的名著『大東亜戦争全史』を執筆し、陸軍

作戦課長を務めた服部卓四郎は、「この大東亜

戦争は、もとより深刻な反省と教訓を

残している。

 朝野をあげて真剣に検討し、日本再建の方途を

誤りなかりしむことが、またもって戦争犠牲者

に対する供養でもある」

 東條の姿を巣鴨プリズンのなかから見ていた

笹川良一は、「東條尋問のためにキーナン

君は馬脚を露し、東條を英雄にした」

と東條を絶賛している。

 また大本営情報参謀で元陸自幕僚長の杉田一次は、

「東京裁判で最後まで堂々と日本の立場を主張

したのは、東條元総理ひとりではないか」

と笹川と同じく東條を賞賛する。

 在日イギリス代表部のガスコインは、本国の

ベヴィン外相に、キーナンの東條尋問は

失敗であったと報告している。

「主席検事キーナンの尋問は、最初から

まごついていた。

 東條がキーナンを軽蔑しているのは、

誰の目からも明らかだった。

 東條は日本の自衛を強調し、戦争を犯罪と

して裁くことに真っ向から反対した。

東條は日本人の尊厳を取り戻した」

 東京裁判を把握するうえで最初に理解すべきは、

木を見て森をみずとならないように、東京裁判

全体の流れを理解することである。

 4万8000ページの記録の細かなことを知ること

も必要かもしれないが、その前に裁判全体の

流れを知ることが大切なのである。

 判決の多数意見に対する反対意見が出されている。

 そのため、裁判記録はあまりにも膨大であり、

その全容を把握するには気の遠くなる

ような作業が必要となる。

 筆者は仕事柄、全10巻の東京裁判速記録を

通読している。

 結局のところ日本が共同謀議によって侵略戦争や

残虐行為を行ったという検察側の主張と、日本の

戦争は自衛の戦争であり、共同謀議や組織的な

残虐行為などなかったという、弁護側の

意見の対立なのである。

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